六月の雨


 今朝、苺2個。たぶんこれで終わり。
 子どもの熱、昨日はあがったりさがったりしていたが、今朝は平熱に戻っている。一安心、かな。いたって元気。

 新聞紙を丸めて、かたつむりをつくったら、「でんでんむし、でんでんむし」と子どもがよろこんで、大小5つほどもつくったのを、ミニカーと一緒に並べて走らせている。うーん、すこし無理のある設定だと思うよ。

 雨の匂い。雨にぬれた緑の匂い。
 庭の紫陽花が色づき始めている。もうそろそろ季節も終わりのパンジーが、なめくじに食われたぼろぼろの姿で庭の隅にある。さざんかの葉の裏にみのむし。芍薬の葉の裏のさなぎはいつのまにかいなくなっている。芍薬の葉も何枚かすっかり消えている。
 雨の匂い。いろんなことを思い出す。5歳までを暮らした家の庭で、はじめてなめくじを見たときのこと。雨季のフィリピンの、スコールの匂い。雨が降るとスラムの子どもたちは表に飛び出して、水浴びをしていた。小さな妹の体を洗っていた女の子。

 それから中原中也の詩。


   六月の雨     中原中也

またひとしきり 午前の雨が
菖蒲(しやうぶ)のいろの みどりいろ
眼(まなこ)うるめる 面長き女(ひと)
たちあらはれて 消えてゆく

たちあらはれて 消えゆけば
うれひに沈み しとしとと
畠(はたけ)の上に 落ちてゐる
はてしもしれず 落ちてゐる

       お太鼓(たいこ)叩いて 笛吹いて
       あどけない子が 日曜日
       畳の上で 遊びます

       お太鼓叩いて 笛吹いて
       遊んでゐれば 雨が降る
       櫺子(れんじ)の外に 雨が降る