トトロ

 子どもが、階段を見上げて「まっくろくろすけさあん」と声をあげたりしているのは、いうまでもなく「となりのトトロ」の影響で、すっかりはまっている。 毎朝起きると、「トトロみる」とビデオをまわすことを要求し、画面のなかのメイちゃんが笑えば笑い、走れば走り、「やだあ」と大きな声で一緒に叫ぶ。そうして、ねこバスが出てくるのをじいっと待っている。
 最近、毎日見ているのではないだろうか。ビデオが終わっても、子どもの頭のなかでは場面が繰り返されているらしく、あれこれのセリフをぶつぶつ言っている。それで突然「がはは」と笑ったり、「おかーさーん」と抱きついてきたりするのだが、こちらは次のセリフが思い出せないので、はからずも、ちびさん主演のトトロはそこで中断されるのだった。「おかーさん、びょういん、いったった」って、そんな泣きそうな声で言わなくても。
 ビデオが終わると、今度は「おんがくしよう、おんがくしよう」とうるさい。最近のお気に入りはトトロの「歩こう」と、英語の「ABCの歌」。もちろん別々のCDに入っているので、いちいちCDをかけかえてやらなければならないのが面倒である。「あとでね」などという言葉が通用するはずもなく、「あとでね」が「いま」になるまで、ぐずぐず泣く。それでリフレインにしておくと、私が聞き飽きてかんべんしてほしくなるのだった。おかげで、中学校の頃にどうしても途中でつっかえる部分があって歌えなかった「ABCの歌」が歌えるようになりました。