カレル・チャペック

 カレルチャペックが紅茶屋さんの名前だとは知らなかった。いま検索して驚いた。でも私が探していたのは、チェコの作家のカレル・チャペックのほう。
 いま『カレル・チャペックの愛の手紙』(田才益夫訳、青土社)を読んでいる。カレルさん、30歳のときに18歳の女優のオルガちゃんと恋に落ちた。それから48歳で死ぬまでの18年間、オルガちゃんに書きつづけた手紙を収録。
 関係に何があったのか、具体的なことはよくわからないのだけれど、関係の変容はなんとなくわかる。いろんなことがあって、たぶん、しくしく心が痛いようなこともあって、恋は友情に変わっていくようで、それでも、知り合ってから15年後くらいに結局ふたりは結婚するんだけれど。
 オルガちゃんは若くて、たぶん、ふつうに愚かで、カレルさん、12歳年下の娘を心配したり励ましたり、苦言を呈したり、いろんなことを言っているけれど、それは通じているんだろうか。でも関係がどう変わっても、たぶんとても辛いときにも、カレルさんの手紙には変わらない思いやりがある。この思いやりは得難いものだ。
 カレルさんの手紙を読みながら、私はとても幸福な気持ちになる。ふつうに愚かな女の子にも、こういう手紙を書いてくれる人がいてくれるということが、うれしい。
 いつか男に生まれることがあったら、こういう手紙を書ける人になろう。こういうふうに素直で率直で、どんなに格好悪くても心と言葉を出し惜しみしない、やさしい手紙を書ける人になろう。