操作

 パソコンの電源は切っていたはず、蓋も閉めていたはず。なのに台所からもどってみると、開かれた画面には見たこともない英語のページが。しかもカーソルが動かない。一瞬パニック。では、ちびさんがパソコンを操作したということだろうか。それでどうすればいいのだろう。考えている間も小さな手を伸ばしてきて、おそれげもなくキーボードを押す。あいにくパパもいない。しょうがない、子どもの手を払いのけて、強制終了すると、暗くなった画面を見て大泣き。
 
 私は機械は苦手だ。家にはテレビも2台、ビデオデッキも2台、DVDとかレーザーディスクとかもあるし、たくさんの機械を積み上げたオーディオも、スピーカーもいくつもあるし、パソコンもプリンターも何台もある。聞けば、もらったり拾ったり中古品だったり、そんなものばかりだが、数だけは一部屋埋まるぐらいはあるのである。しかし、私が使えるものはほとんどない。教えてもらっても、そんなにたくさんボタンがあっては何が何だかわからないのだ。シンプルなラジカセ程度、いまは小さなCDプレーヤーぐらいは使うけれど、それが限界。あと、ノートパソコンと。リモコンもテレビとエアコン以外は触らない。
 
 子どもは、毎日何度も繰り返し「しんかんせん」のビデオを見ている。終わると「もいっかいみるねー」とやってくる。ところが私は、ビデオの操作も苦手。できないことはないが、どの順番でどのボタンを押せばいいのか、いつも混乱する。それで「もいっかい」が4回目か5回目になったとき、もういいかげんにしなさいと、相手にせずに放っておいたのだ。それから台所で米など研いでいたのだが、背後から「みんなのすきなでんしゃはなにかな」と聞こえてくる。振り向くと子どもがうれしそうにテレビの前でとびはねている。
 「しんかんせん」を見たい一心で、ビデオの操作ができるようになったらしいのだ。