終わりのない闘い

 終わりのない闘い。
 黴との。埃との。
 ヴァージニア・ウルフが自殺したことなど、思う。もちろん、黴や埃のせいで、死んだわけではないが、黴や埃との闘いが、絶望的な闘いであることを、彼女は言ったのだ。ああ、その絶望感!
 
 近くを走っていたローカル線は3年あまり前に廃線になった。そのときの番組を録画していたビデオをはじめ、数本のビデオが、湿気と黴で駄目になった。気づかずに、これは何だったっけ、とビデオをまわしてしまったので、ビデオデッキも壊れた。ヘッドクリーナー程度ではなおらず、新幹線のビデオが見れなくなって、子どもは泣いて泣いて泣いた。パパは、壊れたビデオデッキがまたひとつ増えたことに、ショックを受けていた。
 なんでもとっておくものである。いつ手に入れたものか知らないが、3台目のビデオデッキにつなぎなおして、とりあえずことなきを得た(泣く子を黙らせることができた)。
 
 2階の押し入れは黴が発生しない。客用の布団をそこに私はしまいたい。その押入れは夫の持ち物、壊れた、あるいはいつか直すつもり、あるいは捨てるところがない、もしかしたらいつか必要になるかもしれない、あるいは思い出のある、古いコンピューターのようなものとか、ビデオの山で占領されていたのだが、そのうちの半分を別の押し入れに移して、部屋に積み上げたままの布団をしまった。すこし部屋が広い。
 
 もらってきた食器の類をとりあえず置いていた板の間の隅にも黴発見。食器を片付けるためには台所を片付けなければならないし、ともあれ、今日はこれからそれをするんである。
 
 いらないけれど捨てるに惜しく、でも狭い家に置いておけない、というものを、いろいろともらってきている。うちだってもう十分狭いんだが。衣類や鞄や食器。リサイクルショップにもっていっても、ひきとってもらえるのは数点だけ、280円と150円もらった。
 
 片付けても片付けても片付かない。捨てずに片付けるのは不可能だと思うが、もらいものばかりで生きているので、捨てるのがこわいのだ。子どもまで壊れたおもちゃを捨てようとしたら、泣いて抵抗する。吐きそうである。それにしても、この忌々しい黴! しかも雨。