腎臓の値段

 自分で見ていたわけではないのだが、深夜のニュースの特集が、マニラのスラムの話だったと夫が教えてくれる。どこのスラムか、ときいても、海の近くのスラムだった、としかおぼえてくれていないが。腎臓を売った人たちがたくさんいて、傷跡が痛むとか、力仕事ができないとか、金は、薬だとかあれこれで使ってもう残ってないとか、言っていた。腎臓売買の、値段があまりに安いので、日本円で40万円ほど、それではあんまりかわいそうだから、政府が値段を決めよう、70万円か75万円かぐらいにはしよう、という話題だったらしい。
 
 カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』という小説は、臓器提供のためだけにつくられ、育てられたクローンの子どもたちの話だったが、そんなに荒唐無稽な設定でもないかもしれない。
 
 いいとか、わるいとか、いいようもない。せつない話だ。だれかの犠牲の上に生きてしまういのちの。