いや。

 あとはお風呂に入って寝るだけ、という時間になっても、まだ遊びたい。トーマスのレールを片付けるのをいやがって泣き、ミニカーたちを片付けられて泣き、それでも懲りずに、新幹線のビデオを見ると言い張り、それも取り上げられると、お絵かきボードを出してきて、「しかんかせんかくねー」と言う。私に新幹線の絵をかけというのだ。はっきり言って、かきたくない。飽きた。
 ここんとこ、しんかんせんの絵ばかり、かかされている。レシートの裏にまで、「ちいさいしんかんせんかくねー」とかかせるのだ。ちいさいしんかんせんなんて、みみずかあおむしのようにしか見えないのだが、それを言うと、「みみずしんかんせん」「あおむししんかんせん」とうれしそうなことだった。
 しんかんせん、かきたくないので、「しんかんせんは、もう、ねました。」とボードに伝言版のようにして書いてやる。するとボードを消して「しんかんせんかくねー」とまた言う。とてもしつこいので「いや」と大きくボードにかくと、その「いや」がうれしかったらしい。もっともっと「いや」をかけ、という。
 いや いや いや いや いや いや いや いや いや
 ボードに大小の「いや」を躍らせると、子どもも「いや、いや」言いながら、転げまわって喜んで、ようやく納得して遊ぶのをやめた。
 
 いや。最近きみが大好きな言葉ですね。