キス・キス・キス

 街へ降りた帰り、もうすっかり暗くなっていたが、マクドナルドへ入る。休日のせいか、どこへ行っても人が多い。
 さて、マクドナルドでポテトを食べていたとき、たまたま子どもと同じポテトを手にした。そしたら、子どもが「はい、ママ」と私の口に入れてくれたのだが、驚いたのはそのあとだ。子どもは細長いポテトのもう片方を自分の口にいれて食べはじめた。それでママとキスをすると、照れたようにうつむいてもじもじしている。これはいったいなんなんだ。
 ママとキスしたのが恥ずかしいのだろうかと思ったが、そうでもないらしく、またポテトをもつと、片方をママの口に入れ、もう片方を自分の口に入れて、もぐもぐして、キスする。それからうつむいて、照れくさそうにもじもじする。それをポテトを食べる度に、20回か30回ぐらいは繰り返した。客でいっぱいの店内で。そのうち、私のほうがどきどきしてきた。こんなこと、パパとだってしたことないよねえ。子どもはパパに、ポテトの短いやつだけを「はい、パパ」と渡して、長いポテトは全部、ママと一緒に、キスしながら、食べたのだ。
 子どものすることもなんだかへんだが、「おまえ、心臓、大丈夫か」とパパが子どもに声をかけているのも、なんだかおかしい。
 
 家に帰る途中、そういえば、ケーブルテレビのディズニーチャンネルで、そういう場面があった、とパパが思い出した。2匹の犬がスパゲティを食べていて、それが一本のスパゲティだったので、最後はキスして、好きな相手ではあるらしく、2匹の犬はうつむいてもじもじする、というアニメーション。赤いハートなんかもぽかんと画面に出てきたりするんだろう。
 きっとちびさんは、その場面を演じていたんでしょうね。謎解きはできたけど、なんだかちょっとがっかりだ。せっかくどきどきしたのに、私はお芝居の相手をさせられただけでしたか。