本屋

 2か月ぶり。昨日は本屋のはしごをした。大きな本屋までここから、1時間とか1時間半とかかかるので、めったに行かなくなってしまった。子連れが面倒なせいもある。久しぶりに行くとなんだか興奮する。あの本もこの本もその本も欲しいが、(ひとりなら、あとさき考えず買うのだろうが)、あと何日分のおかず代を残しておかなければ、というようなことを考えると、ためらわれて、せめて何か一冊と思っても、子どもが気になってゆっくり目を通してもいられない。シオランの本が何冊かあってなつかしく、(ある時期読みふけったのだ)、欲しかったけれど、彼のあの絶望感の深い思索は、いっそ快感でもあるのだが、3歳児の子育ての日常と折り合いがつく内容とは思われず、あきらめる。スピノザも欲しいし、ハンナ・アーレントも欲しいし、ヒューズの詩集も欲しかったが、結局買わず。
 子どもは検索コーナーのパソコンの前におとなしくすわっていたのだが、「ここにトーマスってかいたら、トーマスの本のことが出てくるよ」と教えたのだが、トーマスは機関車トーマスだけではなかった。トマス・アクィナス、トマス・ハーディ、トマス・モア。印刷ボタンをクリックすると、その本の情報と店内のどの場所にあるかを印刷した紙が出てくるのだが、ちびさん、そのボタンを押したんだな、トマス・モアの本についての紙切れが、次から次へと吐き出されている。あああ、ボタンを押すのをやめなさい。
 逃げるように、その店をあとにした。
 
 街へ降りたら、電車に乗らなければ気がすまず、次の本屋へは、わざわざ港から電車に乗っていく。それからもう一軒。結局買ったのは、電車のぬりえノートと、のりもの図鑑。いい思いをしたのはちびさんだけだった。家に帰るなり、夢中でのりもの図鑑をめくっている。それからぬりえをはじめた。ドクターイエロー新幹線のページはぜんぶ黄色。車体も山も空もレールも全部黄色で塗るんである。500系新幹線は全部青。空もレールも鉄橋も全部青。まあ、いいか。しばらく前までは、なぜか全部黒で塗るので、もとの絵がなんだかさっぱりわからなかったのだ。