朝、弟から電話。どれくらいぶりだろう。会ったのは祖母の葬儀が最後だから、もう6年か7年は顔を見ていない。「あねきの声が聞きたくなって」だって。
 携帯の電話番号が変わったので知らせようと思ってというが、前の携帯の番号だって、私は知らないんだけどな。今は I 市にいるらしい。「生きてるんならいいよ」。弟との話はいつもそんなもんだ。「父さんに金借りてる。いま仕事してるし、そのうち返すって言っといて」「あにきには連絡せん。金貸してくれってそればっかり」
 まあ、そんなことを言っていた。父さんに借りた金なんか返さなくったっていいよ、と思うが、どうせ返せまい、とも思うが、そういうことでも言ってるうちが、この危うい家族の絆である。 「仕事あるんならよかった。元気でね」。
 弟は声が大きい。電話でそんなに叫ばなくても、と思うような大声だが、小さい頃の人なつっこさや無邪気さは、かわっていないようなところがあって、なんだか笑ってしまう。そうとう面倒も起こしてきたし、たぶんつらいこともたくさんあったんだろうが、そんなことはまあ、あねきには言わないのである。
 ああ、生きて、元気にしてるんならいいよ。