マイドキユメント

 「パパ、うごかないの」と、パソコンで遊んでいた子どもが言いに来た。ふだんは階段を下りるときは、おんぶをせがむ子が、ひとりでしずかに降りていくから、何かやったな、とは思っていた。さて、子どもが遊んでいたパソコンをのぞいたパパが、ダダダダダと階段を下りていく音、その足音で、すでに大泣きをはじめている子ども。
 壊してはいけません、といったって、どうすれば壊れて、どうすれば壊れないのか、3歳半の子どもに理解しろというのが無理である。私だってわかんないわ。パソコンの調子がおかしくなると、パパを呼んで、あとは静かに逃げるのは、子どもも私も一緒である。
 
 パソコンが動かなくなった原因は、子どもが、proglam files かいうファイルの名前を勝手に「マイドキユメント」と書き換えたことによるらしい。こんなところに「マイドキユメント」があるはずがないところに、あったのらしい。マイ ドキュメント でも マイドキュメント でもなく マイドキユメント。
 ちびさん、最近フォルダーをつくるのが楽しいのだ。新幹線や電車の写真や、ゲームの将棋や囲碁やトランプや、思いついたら何でもフォルダーにして、!!!!!!!!!!!!!!とか????????????とか、タイトルをつけていたのだが、それでちびのしわざというのがわかっていたのだが、それにしても「マイドキユメント」とはまぎらわしい。しかも、別のタイトルのものを書き換えるなんて、3歳半の子どものいたずらとも思えないが、むろん子どもはいたずらしたつもりではなく、何か仕事をしたつもりなのだろう。動かなくなるまでは、ふんふん鼻歌をうたいながら、パソコンに向かっていたのである。
 
 パソコン、壊されたくなければ、手の届かないところに置いとかないと、と言って、その言葉の空しいことに気づいた。どこにでも猿のようにのぼる子どもに、手の届かないところ、なんてない。