バラを食べる

 庭のつるばらがたくさんのつぼみをつけている。あんまりたくさんあるので、元気のなさそうなのを少し摘んで、てんぷらにして食べた。いいにおいの紅茶を食べている感じ。おいしかった。三つ葉もわんわん育っているので、これもてんぷらにして食べた。
 
 12歳の春だ、バラのお茶とか、バラのジャムをつくろうと思い立った。つるばらは、近所にたくさんあったので、花びらをむしってきて、煮てみた。バラの花びらを煮出した茶色いお茶に、レモンを落とすと、きれいなピンク色に変わるのを発見したときは、夢のようにうれしかった。ジャムのほうは、なんというか、ジャムにはならず、奇妙なかたまりになった。飴みたいな。その飴を小さな瓶に入れて持ち歩き、学校の休み時間なんかに食べていた。何度つくってみてもジャムにはならず、飴になるのだった。私以外の誰も食べたがらなかったし、翌年からはバラが咲いてもつくらなかったけれど、思い出すと、あの焦げたバラの花の味、ちょっとなつかしいような気もする。