書類

 古い知り合いのK夫妻は、フィリピンで植林をしている仲間を支援している。学生たち10人ほどをつれて今年も現地に行ってきた。パアララン・パンタオとの交流もしてくれて、レティ先生から書類を預かってきてくれたので、取りに行く。
 子どもの靴長靴を2ダースほど、ストリートチルドレンの支援をしているところから貰っていたので、それも持っていく。古シューズは現地でよく売れて、その収益を苗木代にあてているのだそう。
 ご主人留守だったけど、奥さんがいて、旅の過酷をつらつら話してくれる。がたがたの道路をバスで13時間ゆられて現地へ行ったのだ。フィリピン料理が口に合わないので、食べられるものがない。雨つづきで洗濯物が乾かない。去年植林したところに、現地の人たちがヤギを放すので、新芽を食われて、せっかく植林した木が枯れていたこと。植林地域が広くなったので、管理の目がいきとどかないらしい。
 しかも帰国したら、Kさんたち、公的機関や企業から助成金を貰っているのだが、書類の不備の指摘がきていて、提出しなおさなければならず、帰国するなり、深夜、荷物も解かずに、夫妻で書類ととっくみあっていたという。
 助成金をもらえるのはありがたいが、書類の提出はただごとでない。退職後の老夫婦の余暇の仕事としては、相当に過酷だと思う。うちも某公的機関に申請書出すときは(通らなかったが)夜中に夫婦げんかの連続だったが、Kさんちも同様らしく、無給のボランティアでやれる内容じゃないよね、と話していた。「法人にせずに、任意団体にとどめておいてよかったわよ。これ以上書類が増えたら、とてもとても」。奥さん相当お疲れである。
 うちは個人のスポンサーが主だし、先日助成金だしてくれたところからも、そんなに難しい書類は要求されていないので、助かる。というか、これ以上難しいことは、私には無理です。
 
 それはそれとして、Kさんたち、レティ先生から経理の書類を預かってきてくれた。それで今起きて、目を通しているんでしたが、年間の通常経費が、100万ペソを超えた。103万ペソ。去年のレートで250万円超、くらいか。私たちが送った寄付は、180万円くらい。ということは残りの分は、他団体が出してくれている給食費からの流用、現地訪問者からの寄付、身内や友人からの借金、などでやりくりしたのだろう。
 ということは、今年100万円の助成金をもらったが、増築工事費用を払ったら、やっぱり今年も火の車だろうな。毎年毎年、学校の運営が続いているのは、奇跡みたいなことだ。みなさま、ありがとうございます。
 レティ先生の健康が心配だと、Kさんが言っていた。パヤタスの新校舎のすぐ裏がゴミの山だが、現在その場所にゴミが捨てられているので、教室のなかまで臭いがひどいこと、レティ先生、膝が悪いせいもあるんだが、立ったりすわったりがつらそうなこと、ずっと咳をしていたこと。胸が痛くなる。レティ先生、もう67歳なのだ。なんかもう、すごく会いたい。
 書類に同封されていた手紙には、そんなことなんにも書いていない。「もうひとり子どもをつくったら、坊やの遊び相手ができて、子育てが楽になるよ」などと書いてある。それは、無理です。
 
 この数日、ニュースレターの発送の準備をしている。昼間はちびがまとわりついて、「ママー、おしごとしないでー」などと泣いて、はかどらない。こういうことをしていて、本当に救われると思うのは、学校のお金の心配をしなければならないおかげで、自分たちの暮らしむきについて、悩む気力が残らないことだ。
 おかげで、どんなに財布が軽くても、明るい楽しいわが家。