寿限無

 寿限無の絵本、「じゅげむじゅげむ」と読んでやったら、ちびさん、足をふみならして、とびはねて喜ぶ。たちまち覚えてしまった。つきあって私も覚えた。ちびさんすらすら覚えるが、私はけっこうくるしい。
 
 突然「たとえからだをさかれても、きつねのこどもはうそいうな」などと言う。これは宮沢賢治雨ニモ負ケズの「みんなにでくのぼーとよばれ、ほめられもせず、くにもされず、そういうものにわたしはなりたい」のくだりもお気に入り。ええ、そういうものにわたしもなりたい。
 
 お風呂で、風呂の蓋を丸めてトンネルにして遊んでいるから「トンネルをぬけるとそこはゆきぐにだった」と言ってやったら「うまそうなゆきがふうわりふわりかな」とつづけてくる。「ふるいけや、キティちゃんとびこむみずのおと」「ドラえもんとびこむみずのおと」「あひるとびこむ、イルカとびこむ、ポニョさん(きんぎょのこと)とびこむみずのおと」
 
 日本地図のパズルをしていて、「ママー、徳島県がないの」とか「奈良県宮城県がないの」とか言いに来る。そんなにちらかしてるからわかんなくなるんでしょうよ、とイラッとしながら、現場に行って気づいた。ない県がわかるということは、どこに何県があるか、覚えているということだろうか。県名は全部漢字で書いてあって、ふりがなもついてないのに。いつのまに。
 
 ちびさん、昨日はじめてトイレで▲できる。めでたいっ。泣けそうなほどうれしい。3歳10か月。ああ、やっと。
  小皇帝わたしの坊や排泄のおまえの前にひざまずいて待つ (野樹かずみ)
と書いた五月頃は、トイレをいやがって泣き叫ぶ子と、とっくみあっていたんだったわ。そのあと、おしっこはできるようになったけど、▲はどうしてもいやだったのだ。「うんちはトイレで!!」と襖に貼っていたのたが、視覚支援は効果あったろうか。
 あああああ、うれしい。