頭足人間の天気予報

 パソコンのペイントで、マウスを操作してお絵かきしたりはするけど、紙にクレヨンで絵を画いたり、ということをあんまりしない子で、すこし心配していたんだけど、この数日、急にお絵かきをはじめた。
 日本地図のぬりえをしたがったので、白地図を用意してやったら、北海道は黄色、東北地方は赤、と塗っていたんだけど、ふと見ると、日本海沖に、頭から足が出ている頭足人間が出現している。 2枚目の白地図にも日本海沖に頭足人間が出現。数日して、北九州沖に出現。
 
 この頭足人間たちが、なんというかもう、いろんな表情でたのしい。
 「これ、誰?」ときいたら、「りく」と自分の名前を言う。
 それで頭足人間のりくは、天気予報をしたりもするんでした。
 丸くぐるぐる塗りつぶしているのが台風で、雲があって、丸にひげの生えたおひさまが出て、半円形の虹がかかる。
 テーマは日に日に増えていて、あおむしみたいな新幹線が走り、家もあって、りくの家のほかに「パンのおうち」と「ケーキのおうち」もあるんだそうです。たぶん、パン屋さんケーキ屋さんのことだと思います。
 
 子ども、日本地図の県名はもうすっかり頭にはいっているようで、白地図を塗りながら「長野県は海ある? 岐阜県は?」とか訊いてくる。いまだに、中四国以外はうろ覚えの私は、しばしば間違う。答えが分かれたときは、ちびさんのほうが正しい。
 記憶力はたいしたもんで、数字も教えてみたら、あっというまに英語で100まで数えられるようになった。風呂につかって、ものすごい早口でハンドレットまで数えます。89のあとに100がきたりしてるけど。私がそれに気づかなかったりしてるけど。指を折るのが一本足りなかったりして、なんかヘン、と考え込んだりして。
 
 そういえば風呂。ある夜、湯がいつもよりすくなくて、じゃあじゃあ湯を足していたら、子ども、すでに裸になってお湯もかぶったのに、「おふろ、はいらないのおおお。おふろ、いやああああああ」と大泣き。
 どうやら湯がすくないのと、蛇口からじゃあじゃあ出る音が嫌なのらしく、体を洗う間もけたたましく泣いていたけど、湯がいつもの量になったら、けろっと泣きやんだ。
 それで次の夜、「ママ、おゆ、ある?」と3回ほども確かめてから、やっとお風呂に入ったわ。