一太郎に虫

義母から電話。「一太郎にウジ虫がわいたというから、こないだうちのじいちゃんが徳山で買ったやつは大丈夫かと気になって」という。
一太郎、というからにはパソコンの話だ。ということはむろん、話は、息子宛てだ。「わかりました。パパに伝えておきます」と電話を切って(その前に、ちびが電話をもって、ものすごい早口で、青森から鹿児島まで、新幹線の走る県の県名をまくしたてていたが)、それから、はたと考える。
一太郎にウジ虫?
パソコンを食べるウジ虫って、いるんだろうか。どんなんだろう。パソコンのなかの一太郎の部分だけ、選んで食べるんだろうか。小さな小さな虫がパソコンのなかでガジガジガジガジ小さな歯をたてている姿を思い浮かべたりする。徳山で買ったっていってたけど、そのあたりで一太郎を食べるウジ虫が大量発生したということなんだろうか。
「パパ、パソコンを食べるウジ虫がいるの? おばあちゃんが心配してたよ。一太郎にわくんだって」
と告げると、一瞬の沈黙のあと、「ああ、ウイルスか」と言われて、はあ、と思った。なんだ、ウイルスのことか。
私は本もののウジ虫だと思いこんでいました。
そういえばウイルス。パソコンを自分で使うようになるまでは、風邪のウィルスのようなもんだと思っていた。つまり、何かの病気が、パソコンから人に感染するんだと思ったのである。ニュースで大きくとりあげられたりするからには、風邪程度ではない重い症状かもしれない。そんな危険があるのに、どうして一般家庭にまで、パソコンを普及させる必要があるのか、また使おうとするのか、私は不思議で仕方なかった。