ケニアでは…

庭のさざんかが咲いていた。
ピンクのは家の裏の、ほとんど見えないところにあるので、気がついたら、花ざかりというふうだった。
 
月曜の療育センター。
ちびさん、リズムのときに、みんながお馬さんするときに、これまで私の背中にしがみつくだけで、自分でしようとはしなかったのが、はじめて、自分でする。保育士さんたち、喜んでくれるが、そんなに甘くないぞ、と母は思う。
案の定「ケニアでは…」とつぶやいたちびさん、ケニアのシマウマになったあとは、まわりのみんなが何をしているかはまったく関係なく、ひとりで違う物語をはじめた。
 
世界地図の絵本のページ、日本が真夜中の12時のとき、ケニアではシマウマが夕日を浴びて立っている。ブラジルはおひるの12時で昼ごはんを食べている。アメリカは朝ではみがきをしている。イギリスは午後で、スケートをして遊んでいる。みんなが、リズムをしているフロアの真ん中で、ひとりで、寝たり、歯磨きしたり、ごはんを食べたり、スケートをしたりしていたが、ちびさんが何をしているのか、私以外のだれもわからないだろう。
年配の保育士さんが、少し無理やりな感じで、リズムの輪につれもどしたら、物語を中断させられたちびさん、怒って泣いて、しばーらくすねて何にもしなかった。