重油の虹

去年の短歌研究の新人賞を受賞した吉岡太朗さんが、「京大短歌」のホームページに、野樹の短歌について、書いてくれました。「今月の一首評」のところ。吉岡くん、ありがとうございます。

http://www.kyoudai-tanka.com/index.rb

かたちなき憧れゆえに漂着の重油に浮かぶ虹を見ている(野樹かずみ)

二十代半ばに書いた歌。
「野樹の詠む希求の歌には常に、希求の抑圧が併在している。」
作者は気づかなかったことでした。
「希求の抑圧は主体にとって、その痛み多き世を生きてゆくための生存戦略の一つなのではないか」
おお。

去年の夏頃かな、古い知人に会ったときに、最近の若い子って、なんでこんなにしっかりしてるのかな、という話などしていたら、笑って、「おまえがしっかりしなさすぎたのよ」と言われて、そうだわね、と思ったけど、吉岡くんも、まだ二十歳ぐらいだと思うんだけど、ほんとに、最近の若い子って、なんでこんなに賢いんだろう。
二十歳のころって、私、何してたかな。短歌書いたりするとは、夢にも思ってなかったな。あー、でもこっそり書いたりしてたか。まったく自覚はなかったな。

駅前の地下牢にある壁ひとつ青くてそれは海と呼ばれる(吉岡太朗)
ゴミ箱に天使が丸ごと捨ててありはねとからだを分別しにいく
       (短歌研究新人賞受賞作「六千万個の風鈴」から)