ひつじがいっぴき

梅が咲いた。鶯がほーほけきょと鳴いているのに気づいたのはちびさんだが、カラスだと言い張る。そっか、きみはカラスと鳩しか知らないんだな。夕方、ポストまで歩いていたら、頭上で羽ばたく音がして、見上げたら棕櫚の葉が風に鳴っていた。帰り、空地でふきのとう摘む。天ぷらとふきみそをつくった。やたらおいしかった。春だ。

夜、ちびさん喋りつづけてなかなか寝ない、ので、羊を数えるように言ってみた。単調に数を数えながら寝てくれないだろうか。すると、数えはじめた。「ひつじがいっぴき、ひつじがにひき……」ききながらうとうとしていたのは私。
「ひつじが66ぴきなの、ママー」という勢いのよい声で起こされる。「ひつじのつぎは、うしが、いっぴき、にひき…」えっ、牛も? うしはいっとう、にとうです。「ママー、うしは8とういるの。それから、ねこが、いっぴき、にひき……」猫も。「ねこは6ぴきなの、ママー。それから、いぬが……」犬も。「いぬも6ぴきなの、ママー。それから、じどうしゃが、いち、に、さん……」なんだかにぎやかになってきて、「それから、しんかんせんが、いち、に、……」それはもう、騒音だ騒音だ。いいからもう、黙って寝なさい。
みたいなことだった。