紙ぴあの

紙ぴあの。
つくってやったら遊んでいる。音がつながって曲になるのが不思議らしい。ちがう曲が同じ音をもっているのも不思議らしい。わたしも不思議だ。ちびさんが階名を覚えて弾けるようになったのは「ジプシーの踊り」という曲。 

小学校の何年のときだろう、大阪の親戚が、古いオルガンを運んできてくれた。ピアノもオルガンもなんにも買ってあげられないからありがたい、と母は感謝していたが、あっても弾けなければ、そんなにありがたくもないのである。もっとも弾けないから、壊れて出ない音があることなんかは気にならない。それで古いオルガンは私のものになり、あるなら活用するしかない。足踏みのところの空洞が、隠し金庫。お金だとか、大切なものをいろいろしまっていた。暗号文の解読表なんかも。弟が、家の中の小銭を持ちだしては、いろんなものを買って友だちにふるまっていたのが、発覚したときも、隠し金庫のなかの私のお金だけは、大丈夫だった。

オルガンが楽器として使用されたのは、中学2年の夏休みの音楽の宿題に、作曲、というのが出たときに、音を探すのに使ったときぐらいかな。そのときつくった曲をまだ覚えている。ヘッセの詩に曲をつけたので、ヘッセの詩もおぼえている。

  空を越えて 雲はゆき
  野を越えて 風はよぎる
  野を越えて さすらうのは
  わたしの母の 迷える子