母たち子どもたち

10日午前中は療育センター。去年、療育のクラスに通って今年は幼稚園に行っている子の親たちと担当の保育士さんとの懇談会。私のほかにはダイちゃんのママと、リュウくんのママ。

ダイちゃんはちびさんと同じ幼稚園の年少さん。「こないだ、りくちゃんを見かけたよ」と、最近の様子を教えてくれる。
みんながリズム遊びをするとき、ひとりで走っていたこと。楽器はひとりで抜けがけして(先生の指示はきかずに)取りにいっていたこと。「以前は、ひとりで遊んでる姿が多かったけど、みんなと同じことはしないけど、みんなと同じところにいて、お弁当もお友だちと一緒に食べててびっくりしたわ」と言う。

ダイちゃんも幼稚園になれてきて、ママの膝から降りて先生の膝からも降りて、広告の紙をもって、おともだちと一緒に走っていたらしく、子どもたち、なかなかがんばっているのだった。

リュウくんは発達検査の結果が、かんばしくなかったらしく(それもとりようではあるんだが)これから同年齢の子とどんどん差がついてしまって、ついていけなくなるかもしれない、と思うとつらいようなのだった。
「まわりと比べちゃだめだよ。子どもは成長しているんだから」とダイちゃんのママ。上の子も発達障害で支援学級に通っているという。彼女のあっけらかんさは、なんかすごいよ。

集団生活の難しさ、について。
たとえば、ダイちゃんのママは、自分も学校での先生の説明がわからなくて困った、自分の机のところに来て言ってくれるとわかるのに、黒板の前で説明していることはわからなかった、という。
私もそうだが、うちのちびさんもそうだ。みんなへの指示を、自分への指示でもあると受け止めるのはむずかしい。
たとえば「みんなこうしましょう」の「みんな」のなかに、自分がふくまれているかどうか、わからない。「ふつうはこうするもんだ」という言い方に、「おまえもこうしたほうがいい」という意味があるとは思わない。
みんなはどうするか、ということと、自分はどうするか、ということとは、もとより別なのである。
(という行き違いが起きるものなのだと、早くから理解できていれば、私は、人間関係の、嘘のようなわけのわからなさに、あんな、心身が壊れるような苦しみ方をせずにすんだわよ、と思う。ふつうのひとの、ふつうのもののいいかたは、かなりあいまいで、だから、かなりひきょうだ、と私は思う。)

11日は、以前の療育のお母さんたちと食事会。リュウくんのママのほかに、ユイくんのママ、ハヤくんのママ、ユウトくんのママ。
子どもたちの成長ぶりは、それぞれに素晴らしいし、子どもたちの話をしている間は楽しかった。

高機能自閉症の診断で、療育のクラスに出てくることもなかなか難しかったユウトくんが、遅刻もせずパニックも起こさず、幼稚園に通っているという。モンテッソリの幼稚園なのだが、みちがえるように落ち着いたのだと、ママは、すっかりモンテッソリに心服していた。

他の子どもとの違和がわりとはっきりと目に見えてしまう、ダイちゃんやユウトくんや、うちのちびさんなんかは、親たちも、自閉症なら自閉症という診断名を受け入れるほうが、受け入れないよりも自然だし、かえって気が楽である。
子も孤立感が強いが、親もわりとそうで、はやりのことばでいえば、空気読めない、読まない組だし、てんで勝手なマイペースぶりなので、私なんかは一緒にいて、さばさばしていて気持ちがいい。

ところが、もっと症状の軽い子どもたち、発達障害でない、といえばいえてしまいそうな、いわゆるグレーゾーンの子どもたちは、親も子もけっこう悩ましいようだった。子どもは子どもで、ほかの子どもたちと一緒に遊ぼうとして、無理してしまうのが、いたましいし、親は親で、発達障害でないかもしれないのに、医者に、発達障害と決めつけたような言われ方をしたと傷ついていたりして、医者の言葉への信と不信のあいだで、さまよう心がつらい。

発達障害であるかないかということと、幸福か不幸かということは、別のことだし、どっちにしても、自分の子どもについては、親としては、この子は幸福になると決めてかかるほかないと思うよ」
と言ってはみたが、なんだか言葉が、宙にさまよっていたなあ。

発達障害とひとくくりに言っても、子どもたち十人十色、全然違っていて楽しいのだが、親たちの温度差、みたいなものが出てくると、なんだか、ぎこちなくなり、それでも、誰からとなく声が出て、集まったりするのは、みんなヘンで、みんないい、みたいところが、他の親たちと話すよりは、ずーっと気楽で心が開けるからなのだろう。

散会したあと、ハヤくんのママと(というより、昔の家庭教師先の生徒だったMちゃんと)少し話す。パパとちびさんと待ち合せしていたマックがあるデパートまで送ってもらう。あとで、ハヤくんをお迎えに行ったMちゃんが戻ってきて、ちびさんとハヤくん、このふたりはウマがあう。すばらしい笑顔で、追いかけっこをはじめた。

またね。