映画館

金曜日、映画観てきた。映画館で映画観るなんて、子ども生まれてからはじめての気がする。「光州5・18」
ひとりで観にいった。映画はひとりで観るのが好き。「ママ、なかないで」と泣くちびさんもいないし、心おきなく泣きました。



学生のころ、よく通った映画館。お客が女の人ばっかりだったのは、女性1000円の割引の日だからだ。映画が終わって、50代くらいの男性スタッフの「ありがとうございました」の声を聞いたとき、ふいに、昔、18のころだ、「戦争のはらわた」という映画を観たときに、スタッフのお兄さんに声をかけられたことを思い出した。ちょうちょ、の歌が、ハンスは戦争に行った、そして帰らなかった、という歌詞で歌われていて、切なかった。感想をきかれて、たぶんそんなことを答えた。あのときのスタッフと同じ人かな、違う人かな、こんなに歳月が過ぎてはわからない。

光州事件から、4年後の秋、ひとりで下関から船に乗って、釜山に行った。映画館を出たあと、しばらく歩きながら、そのときのことを、しきりに思い出した。画面のなかの空気感のようなものが、なつかしかった。釜山で出会った学生たち、おばさんたち。たしか戒厳令が解かれてまもないころだった。夜中まで、飲み歩いたりした。日韓併合のころは日本人が住んでいた、という家で泊めてもらったりした。釜山を離れるまでの三日間、私は財布にさわらなかった。知りあった誰彼が、食べさせてくれたり泊めてくれたりしていたのだ。そのあと訪れたハプチョンの町でもそうだった。ソウルから釜山に戻る列車のなかで、となりにすわったおばさんが、ジュースを買ってくれたこと、バナナミルクの味だったことを思い出したとき、また涙が出た。

やさしい人たちがいた。