青い背中

ちびさん、マジックで顔に落書きして、それを鏡で眺めてる。なんだか楽しそうに。
箸も使えないが、スプーンも上手に使えるわけでなく、途中で投げ出して、犬食いしていた。プリン。
それでもプリンだから、犬食いでも最後まで食べるので、ごはんは、面倒くさくなると、「ごちそうさま、じゃ、そういうことで」と、さっさと切り上げて、あっちへ行ってしまうもんね。

プールのときに、あらためて気づいた。ちびさんの背中の蒙古斑。これは、目立つなあ。背中一面に、青痣のように蒙古斑がひろがっているのだ。ほかの子どもたちの背中にはない。ふだん、ちびさんの青い背中を見慣れているせいか、ほかの子たちのなんにもない肌色の背中が、なんだか不思議だった。
蒙古斑…ふつうは、お尻にだけあって、大きくなると消える。お尻以外にある蒙古斑は、異所性蒙古斑というのらしい。「背中のは消えないかもしれないなあ」と皮膚科の医者さんは言ったけど。

顔にわざわざ落書きするんだもんな、背中の痣なんかなんでもないよな。

なんだかそれはインクの染みのようでもあって、その背中に、どんな秘密が書かれているんだろうと、ときどき私は思います。


頭をぶつけて、いたーい、とうずくまったら、ちびさん両手をぬっと出して、私の目をふさいで「ママ、なかないで!」と叫んだわ。それで、見ると、ちびさんが滂沱の涙。痛いのはママ。なんであんたが泣くのよ。

どうやら、ママが泣くのが、こわいらしい。

泣きそびれた。