爆弾

ちびさん、幼稚園から卵のパックにヨーグルトのカップをはりつけたものをもって帰る。最近、こんなものが部屋のなかにごろごろたまっていく。ゴミを持って帰るのやめてほしい、と言いそうになるのをこらえて、「何つくったの」ときく。すると、「ばくだん」と答えた。
「爆弾、何するの?」「わるいやつを、ふっとばすの」
ああそう。爆弾もって帰るのも、やめてほしい。

「幼稚園で、何して遊んだの?」ときいても、たいてい「いろいろ」と答えるだけなんだけど、「いろいろ」と答えるだけにしとけばいいものを、ときどき詳しく話すんだな。
みんなと盆踊りの練習しなかったことは、まあいい。おはようとさようならが言えなかったことは、よくはないけど、明日はするのよ、とママに言われるぐらいですんだ。ところが、「おかたづけもしなかったの」ときたもんだ。

かるーく私が爆発した。
「みんながお片付けしているときに、自分だけしないなんて、卑怯だろ。きみが出したものは誰が片付けてるの。先生かお友だちが片付けるんでしょう。おまえなんか最低だ。そういうのを悪人っていうんだ。悪人だよ。悪悪大魔王だ。そんな悪い奴と一緒に暮らしたくない。出ていけ!」
「でていかないのおおおおおおおん」
ちびさん泣く。
「おかたづけするのおおおお」

泣きやんで気をとりなおしたちびさん、年長の男の子が「はるかちゃんのことをおばさんっていったの」と言う。
今度は、かるーくパパが爆発した。
「おまえも言ったのか?!」
ちびさん、かたまってしまった。
「女の子におばさんなんて言ってはいかん。そいつはぜったい、はるかちゃんにきらわれる。ほかの女の子にもきらわれる。おまえも言ったらきらわれる。女の子にきらわれたら、どんなにみじめか。しかもおまえは、はるかちゃんにはお世話になってる。それをおばさんなんて言ったら、もうおまえを幼稚園には行かさん。パパが行く」
ちびさん、大泣き。
「おばさんはいわないのー。だから、ようちえん、ぼくがいくのー。パパはいかないのおおおおん」

泣きやんで、ひとりごといいながら遊んでいた、そのひとりごとが、またまずかった。
「へへ、もっとくるしめ」
パパがふりむいたので、「絵本のなかのセリフだよ」とフォローはしてやる。悪悪大魔王のセリフである。
ちびさん、受難だ。
「絵本でも、悪い奴の真似なんかするな。そんな絵本借りてくるな」とパパには言われ、「真似する前に、それがよいことか、悪いことかを、自分で考えなさい。悪いと思ったら真似しない」とママには言われ、なんだかよくわからないだろうが、「わかった」といいながら、また泣く。

さらに、部屋で車を走らせていて、パパの足にぶつかった。
「そこ、どけ」と、パパに言った。

幼稚園に行き出して、言葉づかいはよろしくなくなっている。大目に見ているが、パパに「そこ、どけ」はよろしくない。
「そこ、どけ、なんて誰がいうんだ」とパパも聞く。
するとちびさん、正直に答えた。
「ママ」

あ。ごめん。ごめんなさい。そうです。思い当たります。私です。



近所から、畑でとれた胡瓜3本もらった。すごい、でかい。市販の胡瓜の、長さも太さも2倍あるなあ。ふふん。うれしい。ちびさん、たいていの野菜は嫌いだが、胡瓜は好き。