しつぎょうしき

始業式だった。
ちびさん、始業式の間、保健室の先生に、自分がつくった電車と蒸気機関車を見せて、いろいろ説明していたのらしい。
それで、電車と蒸気機関車を大事そうに抱えて帰ってきたが、おかあさんには、牛乳パックがふたつ、セロテープでつないであるのと、もうひとつの牛乳パックに紙屑が貼り付いている、だけにしか見えないんですが。

ちびさん、始業式、をうまく言えなくて、しつぎょうしき、と言う。
失業式、と聞こえて、笑えない。


夏休みのはじまる前から、8月31日に髪を切る、となぜか決めていて、31日に、髪を切りました。庭先で、おとなしくすわっていてくれて、以前、大泣き大暴れしていたのが嘘のよう。
さて、その夜だ、洗面所に顔を洗いに行ったまま、いつになっても出てこないので、見に行ったら、鏡の前で、短くなった髪の毛をさわったりつまんだりしている。
「何してるの?」
「ママ、ぼく、リボンがほしいの」
へ?
「リボンどうするの? 髪に結ぶの? 女の子みたいに?」
「うん、むすぶの」
えええ?
「でも、髪切ったばかりだから、結べないよ。髪の毛のびないと」
「のびたらむすべる?」
「結べるけど、リボン結ぶの?」
「うん、リボンむすぶの」

リルケは5歳までスカートはいて、リボンつけて、女の子の格好をさせられていたというし、それでも立派な詩人になったし、もちろんきみが、リボンをつけていけない理由はない。
でも、髪を切る前に言えばいいのに。2センチくらいの長さに切り揃えたばかりなのに(揃ってないか)結ぶのは無理だよ。

でもリボンなあ。もうあんまり似合わないと思うけどなあ。
ピンクも好きだけど、キティちゃんのピンクのパジャマとかあるけれど、かわいいけど、でも、さすがにリボンはなあ。

どうしたことか、なんだか妙にかわいい絵までかいていた。
「ゆうやけのなかで、こどもが、おはなをみているの」だって。
おはな、だって。一瞬耳を疑った。たしかに、電車には見えない。