げんばくドームの日

ちびさん、毎朝バスに乗るのに抵抗する。
ママに抱きつくのを、べりべりぺりっと(ほんとに音がするみたいに)引き剥がされて乗ってゆきます。引き剥がされながら、昨日は「ぼく、ようちえんは、むりなの」って言ってましたが。

でもまあ、元気に帰ってくる。敬老の日におじいちゃんおばあちゃんに出すはがきを書いたとか、防災センターに行って楽しかったとか。

防災センターの見学に行って、消防車にも乗ったらしい。それからどういう連想なのか、「ママ、げんばくドームのちかくをとおるときは、やけどにきをつけるのよ」と言う。

原爆ドーム。やけど。
何がどう理解されているのか。たぶん、夏に原爆投下の映像か何かを見たのを、思い出すのかな。

季節、日にち、カレンダーに書き込んだ日程、などがしきりに気になるらしい。「カレンダーがわかるなら、親のスケジュール管理もしてくれるようになりますよ」と療育センターの診察のとき、医者さん言っていたけどほんとだわ。
誕生日は何月何日、敬老の日は何月何日、それでその日は何をするとかしないとか、こまかな予定を、ひとりで勝手に立てているが。

寝るとき、いつものように、ひとりで本を三冊ばかり読み、電気を消して「われとそなたはめおとぼし」と「ぎおんしょうじゃのかねのこえ」を暗誦したあと、でもなかなか寝ないで、またいきなり、「ママ、げんばくドームのひは、なんがつなんにち?」ときいてくる。
原爆ドームの日ではなくて、原爆の日。原爆が落とされた日のこと。原爆の日はふたつあります。広島の原爆の日は8月6日。長崎の原爆の日は8月9日。」
「わかった。ママ、げんばくドームのちかくをとおるときは、やけどにきをつけるのよ」
「だから、戦争しないように気をつけるんだよ。わかった?」
「うん。だからママ、げんばくドームのちかくをとおるときは、やけどにきをつけるのよ」
「わかった。わかったから、もう寝ようよう」

当分言い続けると思います。げんばくドームとやけど。