みんな闘っている

泣いたり笑ったり怒鳴ったり叫んだり。
自己主張がぶつかりあって、火花を散らすのがなんだか最近増えてきたのは、ちびさんが参戦するようになったからだな。一番頑固でゆずらないのも彼だ。
昨夜、ひさびさのパニック。ああ、この激しさは。
かわいそうに、たぶん母ゆずりだ。父に殴られたり、教師を怒らせたり、男を逆上させたりしたときの私と同じだ。そしてそのことに気づかない、ある種の鈍さまで似ている。
無傷で生きられるとは思わないが、こわれてしまわないように、母よりは上手に、なんとか折り合いつけられるようになってください。自分自身とも、宿命的に軋んでしまうまわりの世界とも。

インフルエンザの予防接種2回目。
泣かずに病院に行ったのは、パパの説得が効いたらしい。
「体の細胞も血液も、お腹の細菌さんたちも、きみが病気にならないように、みんな一生懸命、ウイルスやいろんなものと闘っているのに、きみは注射をいやがって、自分だけ怠けて、ひどいじゃないか。みんな、きみのために闘っているのに。きみは注射をして、みんなを助けてあげなきゃ。」
それで納得して、病院に行った。いい子だ。

この時期の小児科は、戦場のよう。診察室も待合室もごった返している。泣き声叫び声ひびくなか、一時間近く待たされる。
ちびさん、大人しく待っていたが、診察室で、点滴を受ける女の子が泣き叫ぶのを見て、ついに泣く。「ママ、にげよう!」
いいえ、にげません。
注射は一瞬で終わり、折り紙もらって帰る。


夕映えの山。
「ママ、やまが、あきのいろだ」とちびさん。