こんな家

「ママにおうちをあげるよ」といって、パソコンで絵をかいてくれた。おお、きれいだねえ、と言ったら、もう一軒くれた。車もくれた。

狭い家であるから「ぼくのへや」なんかない。線路を敷いて遊ぶ部屋は家族の寝室なのだが、最近その部屋を「ぼくのへや」と呼ぶ。叱られると、戸をぴしゃんと閉めて、たてこもったりするのだ。
毎日これ以上散らかせないくらい散らかしていて、片付けて布団を敷くのがおおごとだ。部屋の一角は、紙くずの山。といってもただの紙くずではない。家だったり船だったり電車だったり車庫だったり山だったり海だったりピタゴラ装置だったり蝉だったりひよこだったり地図だったり迷路だったり、これから何かになる予定だったり、もしかしたら1か月後くらいには、ただの紙くずになってくれるかもしれないが、いまはまだそうではない紙くずの山。
紙くずの山、なだれを起こすようになってきていて、困る。

「片付けないと捨てるよ」「すてないのー」のやりとりは毎日のことだが、今夜は、いちめんに電車や車を散らかしたなかにすわりこんで、本(宇宙の図鑑)を読んでいたんだが、片付けてって言ったら、
「そんなこといったってさあ、ぼく、いま、本よんでるんだ。それで、いまからお天気の本もよみたいんだ。ママ、お天気の本もってきて」
と言って顔もあげないのだ。

一瞬、言葉を失ってしまったよ。
片付けない子に本なんかもってきてやるもんか。