あこや貝のように

宿探し。
見当はつけてある。斎場から焼き場へ続く道にあるビジネスホテル。
フロントに人がいないので、たぬきかきつねの宿かもしれんぞ、とパパは警戒していたが。
5月に帰省したときに見つけたのだ。
 
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フロントに行くと、やはり誰もいない。喫茶店のほうに呼びに行くと、お姉さん来てくれて、手続きする。なんと、宿泊費値下げしていて、シングル3900円。ツインが7000円。朝食が400円。
「では、鍵、ここにおいておきますから」とフロントのテーブルの上に無造作に置いて、また喫茶店の仕事に戻っていった。
泊り客、ほかにいそうもない。

さて、探検、探検。
エレベーターは狭いが、動く。
部屋は、なんというか、郵便番号3桁の時代のパンフレットの写真通り。昔なつかしいお布団カバー。冷蔵庫が妙にでかい。なかの水は無料。なぜかレンジまである。持ち込みなんでもOKなんだな。机と椅子は、なんというか、事務所の払い下げ品、という感じ。お風呂とトイレはふつうのホテル。何も問題なく。エアコンもある。十分である。廊下のマット(ハートの模様のマットもあるよん)や椅子は、こちらはなんというか、バーの払い下げ品。311号の隣が316号だったり、ふしぎだが、ここはなかなか、いいよ。

父を迎えにいって、そのホテルに隣接している喫茶店で昼食にする。
喫茶店は客がいっぱいで、となりの焼肉屋の座敷に通される。6つか8つか座敷があるんだが、そこに通されて、また、たまげた。
4畳くらいの広さ、畳がすりきれているのも素敵だが、各部屋テレビがついている。しかも映る。子どもの玩具までカゴにはいってる。
ちびさん、退屈しない。

それから、父とおばさんを、おばさんの義妹の家まで連れていって、それから私たちは、叔父と兄をさそって、釣りに行った。

さて、ひとりで、このホテルに泊まったパパ。気に入ったらしい。不満なのは、時計の液晶が壊れていて、何時なんだかさっぱり読みとれないことくらいだったって。

ホテルのパンフレットのコピーに、
「美しく光る真珠は、お客様であるあなた。私たちは、真珠をやさしく育むあこや貝のように……」
とあるんだが、いや、このホテル、面白い。

朝食は、400円と思えない充実ぶりらしい。火曜日は、喫茶店とかお店のほうが休みなので、朝食はないかわりに、パンをおいておくので、無料で自由に食べていいんだって。夜も、店を閉めているので、カップヌードルを置いておくから、それも自由に食べていいんだって。

なるほど、あこや貝だ。見てくれはよくないが、なかなかに良心的。

泊り客ほかにいないし、夜はすごーく、しずかだったらしい。
そりゃそうだろうな。近くにあるのは斎場と焼き場だもん。

なんか、秘密基地みたいなホテルだよ。