誕生日

ちびさん誕生日だった。11月1日。
めでたく6歳。

ママにはお金がない、ということを、ちびさん、よく知っているはずである。パパにはもっとない、ということもわかっているはずである。
しかし、ぼくには玩具もお菓子もたくさんやってくるのだと、信じて疑いもしない。

そして実際やってくるのだ。誕生日の前々日には、私の友人からミニカーとお菓子の詰め合わせが、もうすでに届いている。

前日の10月31日土曜日は、幼稚園の秋祭り。
代休で3連休になるので、31日の夜、山口のおじいちゃんおばあちゃんちに行った。

1日、朝からトイザらス
義父とパパとちびさんの間では、すでに話がついていたらしい。大きな箱をふたつ抱えてくる。
ふたつも。
びゅんびゅん車が走るやつと、プラレールの電車の駅らしい。

さらに。
ランドセルも買ってもらう。

昼ごはんの寿司とケーキも買って帰る。

ちびさん、寿司食って、さっそく遊ぶ。夏に、私がフィリピンに行ってる間に買ってもらったらしい玩具も出してきて、もう床いっぱいに電車も走る、車も走る。びゅんびゅん走る。ちびさん、興奮がとまらない。

こんなもの家にもって帰られては、日常生活がなりたたない。
義父母の家に置かせておいてもらって、たまに来たときに遊ぶことにする。ちびさんもそれは了解済みらしい。

トムとジェリー」のビデオがあって、何度も何度も何度も何度も見ている。ちびさん、ねこになったりねずみになったりキーキーキャーキャードタバタすごいのだ。その間、床では電車と車が、やっぱりびゅんびゅん走っている。もう何がなんだか。

3日間、そのように過ぎた。

3日の夕方、広島に戻る。中国自動車道の紅葉と夕映えの山々はとても美しかった。家にたどりついたあたりで、町内会長に呼びとめられる。地域のお祭りがあって、子どもたちにはお菓子が配られたのだと、ちびさんの分をくれる。大きな袋いっぱいのお菓子。

もちろん。
世界はきみを中心にまわってはいない。
まわっていないが。
でもたぶん、世界はきみの思うままだよ。

ちびさん、赤いチョッキと赤い帽子で、ねずみのコスプレしている。