自閉症児のコミュニケーション(自閉症基礎講座第3回) その3

自閉症児のコミュニケーションに及ぼす特性〉

  感覚の受け入れの問題
  人との関わりの問題
  物事の理解(想像力)の問題
  視覚と聴覚のアンバランスの問題

☆物事の理解(想像力)の問題

○興味の対象が限られる、こだわりが強い、注意の向け方が偏っている。

たとえば、
好きなことには、よく取り組むけれど、そうでないものにはまったく興味を示さない。
自分のなかにあるパターンにこだわる。(同じ手順や同じ環境でないと落ち着かない、不安)
全体ではなく細部に注意が向きやすい。

〈対策〉
こだわりの背景に不快さや不安、わからなさがないか考え、背景にあるものの方の解決を考えていく。
こだわりを否定せず、むしろ活かしていく。
好きなことを手がかりにそれを核に、少しずつ変化をつけ、興味の幅をひろげる。
注意できる範囲に物事を配し、目に入って自ら気づけるようにする。

○周囲のできごとの意味が理解できない。

゛今゛゛ここ゛だけに意識が向いていて、前後やまわりの状況とのつながりがわからない。そのため、次に何が起こるのか不安。
たとえば、
「貸してね」といいながらマーカーに手をのばされると、急にとられたと思う。
玄関チャイムの音でお母さんが自分のそばからはなれると、急にいなくなったと思ってパニックになる。

〈対応〉
ひとつひとつの事態にことばを添えて、丁寧に説明をする。→経験を積み、ことばで整理してもらうことで、行動のレパートリーが増え、対応できる幅が少しずつ広がる。
怒らない。(怒っても何に怒られたのかわからない、かえって混乱や不安、恐怖を助長する)
見えるようにする。

○状況把握が困難、文脈のなかでの理解ができない。

たとえば、
まわりの状況を、まわりで起こっていることやまわりの人の様子から、総合的に判断することが難しく、一部だけを見て判断する。→何がおこっているのかつながり(因果関係)がわかりにくい。自分の判断があてにならず不安。
必要な情報とそうでない情報を区別しにくい。
たくさんの情報を同時に扱えない。
状況に応じてどのように行動すればいいのか計画をたてられない。

〈対策〉
これから何をどのくらいどいうふうにするのか、どのような行動が期待されているのか等を、視覚的な手がかり(絵、文字、写真、ビデオ、モデル等)をことばでの説明とともに示し、見通しを持たせるとともに、暗黙の了解事項を目に見えるようにする。(このとき、具体的に、端的に、直接的に伝える)
必要なものを整理して、わかりやすく提示する(構造化)。
コミック会話やソーシャルストーリー、ビデオでの学習、ロールプレイ等も、学童前後くらいから子どもにあわせて利用する。

○曖昧なことが理解できにくい(1対1対応処理)

たとえば、
曖昧なことが理解できにくい。
(1対1の対応、ルーティンに強い)
抽象的な概念の理解や思考が難しい。
物事の柔軟な理解が難しい(こうだと思ったら変えにくい)
他の場面や人などへの応用が難しい(般化の困難)

〈対応〉
情緒が不安定な間は、繰り返されたパターンで課題や生活を整え、安定させる。構造化されたアプローチ。
認知が育ち情緒が安定してきたら、少しずつパターンを崩して、新しい内容でも受け入れていけるような働きかけをする。
曖昧なことをはっきりと示す。
パターン化が崩せるということは、それだけ柔軟に外界へ適応し吸収できるということ、獲得された手段を他へ応用する力としても発展。

こうした物事の理解の難しさから

曖昧なことが理解できにくい
状況全体からぱっと判断する事の困難
必要な情報と自分の思いを合わせて計画を立てることの困難

予測をたてたり、臨機応変に対応するのが難しくなる。

コミュニケーションは現場の状況に応じて七変化するので困難が大きい。


☆視覚と聴覚のアンバランス

○聴覚だけでの理解が難しい。(状況に応じて違う)

音声によることばはすぐに消えてしまう。
ことばの意味を検索する時の脳の使い方やことばの脳の中での辞書の有様が違うので、ことばひとつについても引き出しから取り出すのに時間がかかる。
たとえば、
長い文章で言われるとわからない。
目で見たものにとらわれていると聞くことが難しい。見えているものからのメッセージが優先する。などなど。

〈対応〉
目で見てわかる手がかりを用いる。
ジェスチャー。絵や写真、文字などの視覚的なものを用いる。

○話されていることばの聞き取りと分析能力が不十分

たとえば、
話のなかの、子音や母音などの一部や区切りの間がうまく聞き取れない。
まわりに雑音があるとうまく聞き取れない。
聞きとること自体にエネルギーがいる。などなど。

〈対応〉
ゆっくり話す。
はっきり、短く、端的に話す。
次々にまくしたてない。
言い方をあれこれかえない。
文字など、視覚的なものを、必要に応じて使用する。
背後が騒がしいときには、静かにできれば静かにして、できないときは、視覚的なものを示したりする。

(まだまだつづく)

言葉の聞き取りと分析能力の不十分については、子どももそうだろうが、私自身が困っている。
電話が嫌いなのは、聞き取りが難しいからというのもあるだろうなあ。ひとり暮らしのときはそれほどでもなかったが、家族がいて、部屋で物音がしたりすると、まして子どもがしゃべったりなんかすると、電話の声が聞き取れない。どうかするとエアコンの音が邪魔になる。聞きとれても話の内容をすぐに理解できるかというと、それがまたそうでもなかったりするのだな。

電話でなくても、パパと話しているときにちびさんが話しかけたりしたら、もうどっちの話もわからないし、何かに気をとられていると、話しかけられても返事ができなかったり、指示に従えなかったりする。
そういうのが3人一緒に暮らしているんである。どうして返事しないのか、ひとの話を聞かないのかと、いつも、だれかがだれかを怒っているが、そりゃもう、まったくお互いさまなんだな。