自閉症児のコミュニケーション(自閉症基礎講座第3回) その4

自閉症の人の世界

文化もことばもちがう、外国に投げ出されたような世界。
混沌としたあいまいな世界。
不安・緊張・恐怖 > 安心・平気

「もし、自分の周囲で起きていることの意味が理解できず、自分が周囲の人たちに伝えたいと思うことの伝え方が分からず、さらにその状況がどのように推移していくのかという見通しをたてることもできず、その上その困難な状況を脱却するための想像力を失っているとしたら、あなたは一体どのような反応や行動をとると思いますか?」(パトリシア・ハウリン)

自閉症児の得意なところを使って

自閉症児の特性は発達に伴って変化していくけれど、根本的には変わらない。
発達に従って、特性やその程度は変化していく。オウム返しやパターンの強さなどは、物事の理解の仕方が変わっていくにつれ、少なくなっていく。
自閉症児は、定型発達児とは違う脳の使い方で、物事の理解をしている。自閉症児の理解の仕方にあった方法で、物事を伝えていくことで、習得できることはたくさんある。
自閉症児は、基本的に素直でまじめ。

人の考えや気持ち、状況の直観的な理解、相互的で柔軟な会話、自然な仕草や声調の使用は、本質的な特性にかかわっており習得が困難。しかし、目に見えること、具体的なこと、論理的なことは得意でよく理解できる。
子どもが持っている特性を知って、それを尊重し配慮した関わりをしていくことによって、自分の世界とまわりの世界に折りあいをつけながら生活していくことができる。支援者側の理解が大切。
子どもの苦手なところを強めようとする関わりが主になると、失敗経験や形だけの学習となり、表面的にはできても、生きていくための本当の力にはならない。

☆コミュニケーション支援の目的

○生涯にわたっての目的
混乱や不安を少しでも軽くするため。
自分で判断し、自律して生活できるため。
自分はこれでOKと思えるため。

○発達の途上にある子ども期の目的(限界も知りつつ)
人との安定した関係を育てるため
コミュニケーションの存在に気づき、何らかの方法でコミュニケーションをとれるようになるため
まわりの物事の理解ができるようになるため

☆コミュニケーション支援の原則

子どもの特性(強いところと弱いところ)を知り、それに応じた方法を考える。
今の子どもの状態にあわせ、その時点の力(土台)をじっくり育てる。
子ども自身が、コミュニケーションの必要性を実感できるように、子ども側の本当の思いを大人が理解し、それに対してどうすればいいのか支援する。
子どもに伝える(受信)、子どもが伝える(発信)、やりとりする、その形(表現している形)より、むしろその内容に着目する。
促されてからではなく、自分から発信していけるように、ヒントの出し方を、関わる大人が調整する。
場面や相手が変わってもできるよう、違う場面や相手へと、子どもの様子を見ながら広げていく。

☆「わかる」を支援する

○安定した生活の流れ(生活の流れや活動の中身を整える。)

安定した生活の流れと活動をつくる。
大きな変化を与えず、安心してできるものをベースに積み重ねをしていく。(変化は子どもにあわせて少しずつ。なじみのある安心できるものが生活の中にある)
見てわかる形に生活をくみたてる。
物事を予測できる形で示す。
楽しい、好きなことがある。

○子どもにとって必要な情報を子どもに理解できるように伝える。(特性や発達段階、興味にあった伝え方)

自閉症の子どもへの伝え方。

 短く、わかりやすく、はっきりと。
 一度にひとつずつ(あれこれことばをたたみかけない)
 具体的に(目に見えることばで)
 言うより、見せて
 わからない場合、必要に応じて、やって見せたり、実物や絵、写真などのことばにかわるものを見せたり、指差ししたり、実際に手や体をとって教えたりする。
 おだやかに。
 肯定的に。

 できていること、できたことをほめる。
 行動より、中身を読みとって共感的に。
 予告して(変更は早めに伝える)
 はじめは、なるべく成功体験を。
 好きなこと(動機)に向かって。
 むきにならないで。
 ゆっくり見まもって。
 「~ちゃん」の一部としての特性。

*子どもにあった伝え方 子どもにあった個別的で具体的な工夫を

 環境を子どもにわかりやすいように整える→構造化
 例 活動と場の一致、安定したスケジュール 整理された環境
   見やすさ・感じやすさへの配慮等
 子どもに応じた対応の工夫
 子どもの発達や特性にあったコミュニケーションの道具の選択(身ぶり、絵、実物、写真、指差し、言葉、コミュニケーションエイド、見せる、渡す等)と提示の仕方(位置、スピード)
 子どもの見える(意識できる)範囲や、注意がつづいていることを確認しながら、示す。
 ことばの理解や認知の特性にあわせて、子どもがわかるようにはなしかけたり、会話をたすける。

○よくあるNG対応。(こういう対応はよろしくない)

繰り返しことばをかける
言い方を変えてことばをかける
目を見させる
ことばをいわせる
情緒に訴える
むきになる
あいまいな言い方で考えさせる

(まだつづく)

よくあるNG対応は、いやほんと、よくある。笑。
何かしら通路というか、ツボがあって、そこをはずすと、何をしても意味がないというか逆効果というか。はずされっぱなしで、対応されると、まったく困る(から、困らせる)という体験は私もいっぱいしているけど。

はずしたら、はずしたほうの負け。

目をみて、ことばをいわせると、とりあえず、わからせることができたような気になるのだな。あさはかにも。わかってないって。5秒後には、また同じことをしていたり、同じ話を蒸し返しているよ。そのあたりは、手にとるようにわかるのだ。