東京 (地理と気候篇) 

15日の朝は雪。生クリームみたいな雪の道。
ちびさんを幼稚園に送っていって、それから駅へ。
パパがスイカを持たせてくれたが、なんだろうこのカード。
もみじ饅頭適当に買って、ひとりで新幹線に乗る。
東京にゆくのだ。2年ぶり。

新幹線では、ギュンター・グラスの自伝「玉ねぎの皮をむきながら」を読んでいた。
東京駅に着くと、いきなり東西南北がわからなくなった。公衆電話が見つからなくて右往左往する。
ようやく電話見つけて、それから八王子に向かうけど、西に向かっているはずなのに、東に向かっているような気がしてしょうがなくて、とても気持ちが悪い。むかしむかし、はじめて東京で暮らしはじめたとき、山が見えなくて困った。それまで、愛媛でも広島でも、山のあるほうが南、あるいは北、反対側が海、と山と海で方角をはかりながら生きていたのが、いきなりまわりじゅうがビル。
それで山も海もないのに、東西南北はあるのだ。
あのふらふら感を、思い出してしまった。
駅にも電車にもたくさん人がいる。こんなにたくさんの人を見るのは、やあ本当に久しぶりだなあと思う。ものめずらしいけど、楽しくない。
むかし住んでいた八王子駅南口は、再開発で迷路になっていた。もちろん迷う。

ふだん家では、部屋のなかでもコートも着て、ぶくぶくに着ぶくれて暮らしている。3枚重ねのシャツとか、2枚重ねのズボンと靴下とか。それで気ぶくれたまま東京に着いたら暑くて、あっちの駅のトイレ、こっちの店のトイレと、なんだかトイレに入っては、1枚ずつ脱いでいた。

3泊4日の旅のはじまりはそんなふう。