続・就学相談

火曜日、教育委員会の相談室へ。私が東京で羽を伸ばしている間に、担当のT先生が、幼稚園に子どもの様子の観察に行ってくれていて、まずその報告から。
楽しく過ごせていること。集団行動に問題がなく、発表も落ち着いてできていること。ちょうど十進法の勉強をしていたらしいのだが、よく理解していたこと。エネルギーもある。通常学級で十分やっていけるでしょう。

T先生、学区のこともよく知っていてくれて、幼稚園によって、子どもの傾向がちがってくることなど聞かされる。K幼稚園の子は漢字まで習ってくる、とか、ちびさんの幼稚園の子は、好きなことを思いっきりさせてもらっているから集中力はある、が好き嫌いも大きい、とか。幼児教育は、その後にけっこう大きな影響を及ぼすみたい。

ところで、歌ったりお遊戯したりはいっさいしませんね。そこはまず小学校の入学式から困るところでしょう。ええ、しません。どうしてでしょう。やりたくないんですよ。苦手でもあり楽しくもないことを、なぜやるのかという、その意味や価値を自分で発見できない以上はやらないでしょう。いまは、同じ空気のなかにいるだけで、よし、と思ってあげてください。無理強いすると、ますますいやになります。もしかしたら、いまはいやでも、10年後、20年後には楽しいことになるかもしれない。でも無理強いして、絶対いやということになると、その可能性を摘んでしまうことになります。

気になったのは、顔をぶんぶん振ったり、落ち着きのないところが、すこしあること。顔をぶんぶん振る、というのは、家ではあまり見たことがないので、?と思ったが、落ち着きのないところはある。

これから小学生になるからといって、プレッシャーかけて、ストレスになったりしないようにしてください。夏までにのんびり慣れていくのを見守るというふうでいいですから、といってくれる。
小学校に行くからといって、何をどうすればいいのか、私もさっぱりわからんので、夏までのんびり、という言葉を真に受けることにする。のんびり。

ちびさん、多動はあったと思う。忘れられないのは2年前、アジア人権賞の授賞式でレティ先生が講演しているときに、ちびめ、ずっと走りまわっていた。それを追いかけるのが、もう吐きそうにしんどかった。その晩私は熱を出したが、次にレティ先生にあったとき、おまえのrestless boy(休まない子ども)は元気かと聞かれたわ。ええ、相変わらず休んでない。
診察のときに多動を指摘されなかったのは、おもちゃで遊ぶとか知能テストは、本人も好きで、集中できることだったからなのだろう。
最近はそれでも、すいぶん落ち着いてきたと思うのだ。
が。

田中ビネーの知能テストをするという。隣の部屋で先生と一対一でする。私たちはそれを、マジックミラー越しに見ていたのだが、声は聞こえないが、いやもう、なんていうか、面白かった。
ちびさん、せっかちである。問題に答えて次の問題までの、すこしの時間が待てない。じっとしていられなくて、つみきや紐を片付ける手伝いまでしている。そうして首をぶんぶん振る。ああ、こんなふうにふるのか。がたがた椅子を揺らす。たぶんじっとしてないからだろう、途中で手遊びように飛行機の玩具をもたせてもらっていたが、ずいぶん余裕があるんだな。飛行機で遊びながら答えている。飛行機が斜めに傾く、あれどんどん傾く、と見ていたら、ちびさん、椅子ごと転んでいる。
先生がちびさんを助け起こしに行く。マジックミラーのこちら側では、親ふたりが声を殺して笑いころげた。マジックミラーごしに見てると、このちびは、面白すぎる。

首をぶんぶん振るのは、退屈だからでしょうか、と聞いたら、そうでしょう、と言った。この子は頭の回転がすごくはやい。まわりのはやさとあわない。あわせるのもつらい。間がもたなくなるんです。
ああなるほど、それで、その間を埋めるために首をふってるんだろう。たぶん家では、自分のペースで生きてるので、首を振らなくていいのかもしれない。一方ですごく不器用なので、頭のなかで考えることと、現実にできることとのギャップもある。

ちびさん、6歳2か月。5歳6歳の問題はすべてクリア、7歳を3分の2クリア、8歳を半分クリア、途中で「今度は先生が答える番だよ」と先生に問題を出したらしい。
本当に楽しい子ですねえ。9歳の問題は「ぼくは、そんなのむずかしくてできない」と宣言して終わりました。

授業は退屈かもしれないし、間を埋めるために、落書きしたりいろいろすると思いますが、楽しんで受けとめてあげてください。たいへん個性的で、変わった行動をすることもあるかもしれないけれど、それもまるごと受けとめる。
人権感覚のところだけは、小さい子にやさしくするとか、自分ができないからといって、他の人がやるのをじゃましないというようなところは、絶対にゆるがせにしてはいけませんが、それ以外は、どんなこともまるごと受けとめて、楽しんで子育てすればいいですから。
だってもう、生まれてきてくれただけで十分なんですから。

苦しいときは、どうしたって苦しくなります。学校に行きたい行きたくないも出てくるでしょうが、学校は行くもの、と決めてあげたほうが、こういうタイプの子は楽です。
ああ、それはわかる。自分で行く行かないを選ぶのはかなりストレスがかかってしまう。学校は行くもの、と決めたうえで、つらいときはどうするかを考えたほうがいい。

そんなわけで、来月一緒に学校訪問に行くことになる。就学予定の学校の校長室で待ちあわせ。T先生が全部話してくれるだろうと思うので、とっても気持ちが楽だ。あ、その前に学校説明会もあるなあ。

自閉の子から学ぶことはたくさんあります。以前小学校に勤めていたときに、自閉症の子が拍手をする。その拍手の意味は、でも、ふつうと違っていて、「校長の話は長くてつまらん。もう終わってくれ」という意味なんですよ。ほんとうに正直な子どもたちだから。
という話が、面白かった。うん、かわいそうなくらい正直だ。

水曜は、幼稚園の年長さんたち、近くの小学校の見学に行ったらしい。
去年同じクラスで年長さんだった子たちもいて、ちびさん楽しかったらしい。「小学生って、すごくがんばってるんだ」という。机に向かって勉強する姿はすてきに見えたらしい。

でもさ、勉強するには、ちびさん、この机のまわりを、すこーし、片付けないとさ。