サリンジャー

サリンジャーが死んだこと。
まだ生きていたことを知らなかったが。
ライ麦畑でつかまえて」は高校生のときに読んだ。読み終えたあとに、本を抱きしめて泣いたかどうかはわかんないけど、まあ、そのような気持ちになった。「ナインストーリーズ」「フラニーとゾーイー」は買って読んだ記憶はあるが、内容については記憶がない。

パンチョさんが日記に、サリンジャーについて書いていて、

 「共同幻想」への嫌悪。
 「共犯幻想」への懸想。

の二行が、心臓にささった。それはものすごく大事なベクトルではないだろうか。
共同幻想」への嫌悪。
「共犯幻想」への懸想。
その間で、「個」のありようは決定的に変容している。その変容が、何かとても困難で、何かとても大事なことに思える。

共同幻想から引きはがされたら人は孤独になる。孤独を引き受けてゆく「個」の強さがなければ、たちまちそれは暴力になる。他へ向けても自分自身に向けても、いろんなかたちの。
「共犯幻想」への懸想は、言葉をかえれば、同苦へのこころざし。共同幻想を振り払った、あるいは引きはがされた「個」が、暴力にほろぼされないで、ふたたび他者とつながってゆくありようは、そのほかに考えられない。

この社会の暴力性は、共同幻想から引きはがされたときの、あきれるほどの「個」の弱さを露呈しているのだと思う。