5月の森

新緑のきれいな季節になった、と書こうと思っているうちに、梅雨入りだって。ついでにコロナの緊急事態宣言。

5月の庭。こちらは人間の家族、道をはさんで向こうの森は鹿の家族が棲んでいる。向かいの森、持ち主はたぶん30年ほど前に亡くなって、息子という人がたまに手入れに来てたけど、それも10年ほど前までの話。今は、いのししと鹿が自由に暮らしてる。町内会の掃除のときに枝をはらうくらい。でもこないだ、老人清掃隊が、森のなかのこともあろうに桑の木を切り倒してしまった。通路の邪魔になるとか。桑の木ってわかってたのかな。毎年たわたわ実をつけてくれていたのに。もう桑の実ジャム作れない。

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4月で、息子はピアノ教室のレッスンをやめた。受験勉強するから、という理由だけど。最後の日に、教室の小学生たちの前で、いろいろ弾いて、聞いてもらっていた。

お世話になりました。そもそもが、幼稚園に通えそうにない子を、なんとか教室という場所に慣れさせようと連れていったのが最初だったから、ここが彼の社会生活のはじまり、これまでの2人の先生には、子育てに伴走してもらったという気持ち、ただただ感謝です。花屋さんで、先生に渡す花束つくってもらった。
また通えるといいんですけどね。進路がどうなるか……。

帰ってきたイワツバメたち、一羽が地面に落ちて死んでいた。悲しかったんだけれども、これから残った一羽はどうするのだろうと思っていたら、「いや、二羽いるよ」と息子が言った。イワツバメの巣は深くて、外から見えないんだけど、たまに姿を見せる、たしかに二羽いる。つまり、新しい連れあいがいる。イワツバメたち、何があったのだろう。とにかく一羽死んだのだ。巣の下に落ちていた。

 

進路の面談とか志望理由書とか、模擬試験とか、それがよろしくないとか、家に受験生いると、しんどいな。17歳男子。たのもしいのか、たよりないのか、さっぱりわからん。

 

私の世界の、日常の片方に、人生これからという若者がいて、また別の側に、もうすぐに死んでゆくのでしょう、という人生がある。すでに死んだ人たちとの関係性のこととか、私のなかにだけ、宙ぶらりんに残っている物語もある。

 

時間があるのか、ないのか、泣きたいのか笑いたいのか、誰かと何かを話したいけど、いろんな意味で、それは危険なことと思え、さしあたり、向かいの森の鹿の家族にご挨拶する。