解決

今日は、謎の3人組、というタイトルになるかな、と思っていた。それで、もう一波乱ぐらいありそうかなと覚悟していた。
が。

解決したみたいだ。

まず、子どもに「ばけもの」「ちび」「きもい」と言った3人組が特定された。2人は1組で、もうひとりは子どもと一緒のクラス。だから友だちに会うために、3階の教室までやってきていた。それでクラスをのぞいていたときに、私の子どもににらまれた気がしたから、そのあとで「ちび」と言ってしまったらしい。

それについては、3人ともごく素直に、あやまってくれたそうでした。

「ばけもの」と言ったのは、どこがどうなのかわかんないが、「どんぐり」を聞き間違えたらしい。正しく聞き間違えたか、正しくなく聞き間違えたか、わかんないが。

「きもい」は、まあしょうがないかな、と私は思う。
子ども、家ではよく、アニメの「かものはしペリー」というお気に入りのキャラクターの真似をして、のどをグルグルグルグルと鳴らす。
家で、親子の間で、けんかになりそうなときや、ちょっと抗議したいときや、機嫌をとりたいときや、悲しいのをまぎらわしたり、気分転換したいときなんかに、子どもはちょっとかものはしになって、のどをグルグルグルグル鳴らす。
けっこうそれで、わが家はなごんだりして、いい潤滑油なんだが、

子ども、予期せぬところで、「ちび」と言われたショックで、おもわず、
かものはしになって、グルグルグルグルっとうなってしまった。

「きもい」よなあ。そりゃあなあ。
だから、家の外でそれやっちゃだめだよって。

で、解決。

謎の3人組が、1組から来たので、子どもは、野獣派が仲間をつれてやってきて、また3年のときのようなことがはじまるんじゃないかと、不安だった。なぜそう思ったかというと、野獣派たちは、ぼくをいじめたせいで、先生や親に叱られたから、それで、ぼくをうらんでるんじゃないかと思った。

それはありうるかも、と私も思ったが、でも3人組が、野獣派のさしがねでないのなら、その推理は違うのだ。
「ちび」と言われたのはただ「ちび」と言われただけで、背後に邪悪な組織はいない、とわかった。
子どもは、安心した。

アニメの、かものはしペリーは、エージェントPとして、「デューフェンシュマーツ」という悪の組織と、戦わなければならないが、
きみは、さしあたって、かものはしのままでいてもいいみたいだよ。「きもい」は言われるとしてもだ。

それから今日は、発達障害担当の先生にも紹介してもらった。授業の様子も見ていってくれたそうである。

子ども、「直訴状」を担任の先生に渡した。先生からは、「真剣さとやさしさが伝わってきます。校長先生、教頭先生にも渡します」と返事。

なんかさばさばと解決した。



それで、解決したので、書くが、

思うのですが、いくぶん、むかつきながら思うのですが、

あの32番の野獣派は、私と似ている。痩せてて、しつこくて、うそつきだ。それで、告白しますが、私のほうがずっとひどい。
ぶどう盗んで食べてる現場を見つかっているのに、私は盗っていないからあやまらない、と言い張って、絶対あやまらなかったし、毎日、弟をひっかいたり噛みついたりして、自分の欲求を通していた(わが家の姉弟げんかは、毎晩すごかった)、あのころの私にくらべたら、野獣派なんか、すこぶる善良だわ。

それで6番の体の大きな紅衛兵は、パパに似ている。
ちょうど子ども、漢字の書き取りノートの字の汚いのを、またパパに見つかって、また叱られて、(ほんとにふたりとも懲りもせず)、書き直しさせられていたので、
その耳もとに「パパって6番に似てるよなあ、怒ると6番よりこわいよなあ。それでいちいちこまかいことにうるさいよなあ」とささやいてやると、子ども、驚いたように顔をあげて、
「ちがうけど、似てる……」とつぶやいた。

それで、ママは、本当は32番の野獣派に似てるんだよ。と、だきしめたり、キスしたり、しつこくまとわりつきながら言うと、
「ちがうけど、似てる……」とつぶやいた。

一番好きなママとパパが、一番嫌いな6番や32番に似てるっておもしろいねえ。

でも、私が、野獣派の真似をして、子どものまわりでしつこく通せんぼしていると、子どもとうとう怒っていった。
「ぼくは、もうママを一番好きじゃなくなった。通せんぼなんかするから、2番目か3番目か4番目になった」

ああ。よっぽど、野獣派の通せんぼはいやだったんだな。

だからつまりこういうことだよ。
考えてみれば、きみは、あの野獣派よりしつこくてわがままなママと、あの紅衛兵よりおそろしいパパと、でもけっこう楽しく暮らしてるだろ。

だから、あの野獣派や紅衛兵なんか、どうってことないんだ。全然こわくないよ。だから怯えるな。きみは、あの子たちよりずっとこわいパパやママとうまくやっていけてるんだから、ほんとは何にもこわいものなしなんだよ。
自信もって生きなさい。