空が届いた

本を送ると、こちらも思いがけない贈りものをもらったりして、うれしい。
それはきっと、どこか遠いところでしずかな対話があって、そこから寄せてきたさざなみのようなものなんだけれど、詩人の松尾静明さんから「空」が届いた。ひとりで見てるのはもったいない空だ。


  「空」

みんなで見上げていた空
ひとり去った
ふたり去った
いつの間にか
ひとりだけで見上げていた空

ひとりだけで見上げていた空 になって
ながい時間(とき)が経った
それはそれで



それぞれに輝く空のあおへ
それぞれに楽しみの色を混ぜ合わせたりして

ひとりだけを見下ろしている空
に気づいたのはいつのことであったか
その 逃げ場をあたえない
その 修辞を許さない
その 内臓のどこまでへも降りてくる
その まとうたものを暴き曝(さら)す
おおきな無言
その
空 に気づいたのは

なによりも
ひとりだけを見下ろしている空 の
空そのものが堪えている かなしみのあおいいろに気づいたのは