「ママはぼくの親友だからね」って子どもが言う。
ああそうだね、って答える。
「だから、今度生まれるときは、どこかすごくしあわせな国に生まれて、ものすごく楽しい理想の小学校で、ぼくたちは同級生になって、それで親友になるんだよ。だからママ、先に死んでも、はやく生まれないで、ぼくを待ってるんだよ」
……来世の約束までさせられてしまった。
大丈夫だよ。生きても死んでも、千度生まれ変わっても、ずっと親友だよ。

さて、その親友の近況なんだが。
こんな絵かいてる。

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「ママ、こんな街に住みたい?」ってきく。
うーん、私はもっと田舎がいいなあ、って言うと、なんだかさびしそうだ。
いいよ、いいよ。親友と一緒ならどこでもいいよ。
算数の時間に、図形の勉強でさいころ作った、そのさいころにも、街の絵。4面に、朝の街、昼の街、夕方の街、夜の街。
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親友は、ときどきゲームをする。ニンテンドーDSは買ってやらない。昔なつかしい(私は一切やったことがないのでなつかしくもなんともないが)ファミコンで遊ぶ。本体は500円、ケーブルが700円、ソフトが100円、で、パパがどこかで見つけて買ってしまっておいたらしいんだが、それの「シムシティ」という街づくりゲームにはまって、飽きない。
そのゲーム、電気をつくるところから、街づくりがはじまる。電気は、火力発電所原子力発電所から選ぶ。新しいタイプのは水力発電もあるらしいのだが、うちのは、火力と原子力しかない。
親友は、去年の3月11日を境に、原子力発電をやめた。
火力だけで巨大都市をつくろうとがんばっている。公害と電力不足とのたたかいらしい。

それで、親友の将来の夢なんだが、「特急の運転手」って、2年前の幼稚園の卒園式のときにそう言っていたが、いまは、「市長」なんだって。シムシティのせいだな。何か勘違いしてるな、きっと。
でも学校の作文にもそう書いたし、散髪屋のおじいちゃんにもそう言った。おじいちゃんは「仲良くしとこう」と言ったらしい。

あのさ、市長の仕事ってさ、街の設計図かくことじゃなくて、人の話を聞くことなんだよ。いろんな人のいろんな意見を聞くんだよ。たいへんだよ。自分の言いたいことだけしゃべってるのは、いい市長じゃないからね。
そういう市長って、朝鮮学校を差別したり、南京虐殺はなかったとか言ったり、ろくなことしないんだよ。

「ぼくは、りっぱな市長になるよ」って親友は言う。「そうだ、英語も勉強しなきゃ。外国のお客さん来るかもしれないし」
そうだね、たとえば広島なら、来るね。

それで私の親友は、なんだかいつも地図帳をかかえていて、いろんなことを教えてくれる。世界最初の蒸気機関車が走ったのは、イギリスのこの町からこの町の間なんだよ、とか、ライト兄弟のお兄さんが生まれたのはアメリカのこの町で、弟が生まれたのはこっちの町だよ、とか。
で、何度聞かされても、さっぱり覚えられないんだが、私は。

パパに社会科の参考書を買ってもらって、地図とか年表を一生懸命見てる。何がそんなにおもしろいのか不思議でしょうがないが、今日、世界恐慌って何年だったっけ、とわかんないのできいたら、ぱらぱらぱらっとめくって、1929年だよ、と教えてくれた。
私の親友は役に立つ。最高だと思う。