そのうちそんなこともするようになるだろな、と思ってはいたが、
子どもは、宿題の本読み、計算カードを、やっていないのにやったといい、自分でカードにやりましたのサインをしている。嘘なのはわかっているが、でも確証はなかったんだが、昨日、誰かの足につまずいて転んで机にぶつけたらしく、唇の上を怪我してもどってきた。
宿題してないのに、したなんて嘘つくから、そういう怪我をするんだと思うけど、本読み計算カードはしたのかしてなかったのか、って問いただしたら、してませんでしたって、嘘つきましたって、白状したわ。

さて、宿題は本読み計算カードだけではないのであって、プリントとか漢字の書き取りとか、あるんだ。これがまた一苦労で、何時間もかかる。内容が難しくてできないというのではない。ただ集中できない。
親が横でにらんでる間は、かろうじて鉛筆も動かすが、いなくなると、その瞬間に鉛筆投げ出すか、プリント投げ出すか、しているんだな。
見に行くと、
「あー、ぼく疲れて、ちょっと休んでてて」とか「あー、ぼくもう眠くて、だめなんだ」とか「いまからやるところです」とか「むずかしいのでかんがえていたんだ」とか「ちょっと気になることあって調べごとしていて」とか、言い訳だけが増えていく。
でもまた、親が立ち去るとやってない。
寝ころんで、うっとり、なのか、ぼんやり、なのか、漢字辞典など眺めている。

最近、漢字辞典がお気に入り。
「ママ、はな、という漢字のことなんだけど」と話しかけてきたりする。
はな、ってどのはな?
「14画のはな」
とか言う。鼻だな。

とにかく、やります、やります、って10回も言ったのに、全然してないってどういうことよ、もうきみの言うことは信じられないでしょう、って言ったら、いきなり泣き出す。
「ああ、ママに信じてもらえなかったら、ぼくのハートは半分にわれて、こわれてしまうんだ。おねがいです、信じてください」って泣く。
半分にわれて、こわれてしまう、ねえ。

ほんとにもう、声かけして声かけして声かけしつづけてないと、ぼうっと、頭はどっかへ行ってしまって、かえってこない。

なんかなあ、ため息出るなあ。

ところで、子どもの漢字辞典にのってる、一番画数の多い文字は29画の「鬱」らしい。
今夜、宿題していたはずの子どもは、宿題せずに、紙に書いた文字を、自慢そうに見せてくれた。

「鬱」

あんまり仲良くしてほしくない字だが。

「ゆううつ」を「ゆうつう」と覚えて、なかなか修正できずに苦労したことを思い出した。12歳くらいのときだ。「ふんいき」を「ふいんき」と覚えて、これも修正できずに苦労した。13歳のとき。両方とも、憂鬱、雰囲気、という漢字を覚えてようやく修正できたのだが、私が「憂鬱」という字が書けるようになったのは、ボードレールの「巴里の憂鬱」を読んだときだから、15歳だ。

「鬱」

ちびさん、そんな字を書くのは10年はやい。
その字を書いてる間に、プリント1枚、すむと思うけどな。