暑くて貧しくて死ぬということ

「東京都内で先月、ようやく仕事を見つけた元ホームレスの男性(48)が、冷房のない部屋で熱中症とみられる症状で亡くなった。今月15日にも、電気代が払えないため、エアコンを使わずに暮らしていたさいたま市の無職男性(76)が熱中症で死亡したばかり。専門家は「生活保護受給者には、十分ではないにせよケースワーカーなどフォローの態勢があるが、何とか自立している低所得者層は猛暑対策の盲点になっている」と指摘している。」

というニュース。
なんて身につまされるニュースだ。

こないだ帰省して父の家に行ったら、父が私たちのためにエアコンを入れてくれようとしたんだが、動かない。何年も使ってないのだ。リモコンの電池は液漏れがしているし、新しい電池を入れても、手動でボタン押してみても動かない。たぶん壊れている。
エアコン取り付けたはいいが、慣れないし、電気代が不安だしで、使わないままきたんだろうな。父は、扇風機2台とかき氷でしのいでいた。

考えてみれば、ずっとエアコンのない暮らしだった。家にいた頃も、家を出てからも。

学生のころ、西日の入る部屋で、しかも広島の夕凪って、ほんとに全然風吹かないの。暑くてなんにも考えられない。夜になっても部屋がほてって眠れない。ので、外をずっと散歩したりしてた。疲れてそのまま道で寝てしまいそうだったわ。
眠れなかった夏の夜。

東京にいたときも西日の部屋で、エアコンなかった。もらった扇風機は、あるとき煙を吐いて壊れた。
仕事に行けば涼しかったけど、働けば疲れる。だいたい一番時給の安い人間が一番動き回らなければならないようになってるのだ。
休みの日は、とても部屋にいられないので、本屋とコンビニと茶店を転々して過ごすんだけど、ところが茶店って冷房ききすぎて寒くて長居できないんだよね。長袖もってくればよかったといつも後悔した。金ないし、一度店出たらもうはいれないし。
帰ると部屋は熱風がよどんでるし。
自転車は盗まれるし、風呂屋まで片道20分歩くし。

なんかなあ、ああいうのって、生きてるだけで疲れるよな。
それ以上の難しいことは言わんでほしいよな。

無理だし。
金がないって、そういうことだし。

東京で、私が暮らしていたような部屋で、たぶんあのころの私と変わらないくらいの収入で暮らしていた人が、死んだんだなあ。
部屋に氷みずも、なかっただろうかな。

フィリピンにいて、暑くて眠れないときは、氷をもらって、それを首にあてて寝たけど、それも冷凍庫にたくさん氷があったらの話で、小さい冷蔵庫だと間に合わないよね。四畳半に大きい冷蔵庫はないと思う。

せつないなあ。

どうも、私は世の中からこぼれ落ちてるなあ、でもどうすれば、世の中というところに追いついてゆけるのか、さっぱりわからんなあ、と思いながら、生きてきたけど、エアコンないのも、冬に靴の穴から雨がしみて、痛くて冷たくて泣きそうなのも、自分が追いついてゆけないからしょうがないよなあと思いながら生きてきたけど、

ふと気がつくと、いっぱいいるらしいんだった。私みたいのが。


 「低所得者層が猛暑の犠牲になる背景には、生活保護の受給基準である「最低生活費」未満で暮らす世帯が少なくないことがある。07年の国民生活基礎調査を基に、厚生労働省が推計したところ、生活保護を受けている世帯は108万世帯だが、それ未満の収入で生活している世帯は597万世帯に上った。」

597万世帯だって。
数が多いからって、心強いなあ、と思えるような話ではないわね。

つらいよなあ。