家出?

子ども、思い通りにならないと、パニックである。
たとえば、パソコンでゲームできないよ、とか、そういうことで。
泣く、怒る、すねる、あらぬことを口ばしる。
「ぼくはもうごはん食べない」とか「ずーっと食べないで飢え死にするんだ。ママそれでもいいの」とか。
「ママのファシスト! 独裁者め!」とか、言うし。
相手するのがほんっとにめんどくさいが。

でも「死んだほうがましだ」とか言うのは聞き捨てならないので、
言っていいことと、悪いことがある、と私もまくし立てる。
#$%&&%$#%$$####$%&%&&&%%$##|%$#いいかげんにしなさい!
という具合。
「じゃあ死ぬのはやめるけど、かわりにぼくは家出する」
って、戸をピシャンと閉めて行ってしまう。
着替えてる途中のすっぽんぽんのままで、この寒空をどこへ。
と思うまもなく、また戸が開いて、
「10秒たったから帰ってきた」
って帰ってきた。廊下に出ただけだね。

そういえば、私が最初に家出したのは、小学校2年のときだった。
家出する年頃なのか。
土曜日だったか終業式か、とにかく半日で学校から帰ってきて、台所でごはん食べていた。それで母に、家のなかだから靴を脱ぎなさいって言われたのだ。
私は家のなかでもって帰った学校の上靴を履いていた。そういうことをしたかったのである。上靴は、家の中で履くためのものなのに、どうして脱がないといけないのか納得できない。
何度目かに、脱ぎなさいと母に言われたときに、私はぷいと立ち上がって、そのまま家を出て行った。
それから暗くなるまで、町のなかを、ひとりでずーっとさまよい歩いていた。たまさか仕事帰りの父に見つかって、家に帰ったんだけど。
私が出て行ったあと、母は、私のランドセルを窓から投げ捨てたそうである。
通りがかった誰かが、拾ってくれたそうだけど。

最近、ランドセルを投げ捨てた母の気持ちがよくわかる。
夜、子どもが、部屋じゅうに散らかしたビルとか道路とか船とかミニカーとか、言っても言っても言っても片付けないので、ゴジラになってこわしたら、大泣き。
「段ボールでできてるやつはいいけど、ほかのは、よわよわしい紙でできてるのに、ひどいじゃないか」
泣きながら、お片付け。あんたの気持ちもよーくわかるんだけどね。