悪気はない

何かに気をとられると、まわりが見えなくなり、今やるべきことができなくなる。それを責められると、言い訳し嘘をつく。そして、その嘘をほんとうと思いこむ。
これからちゃんとします、と泣いて言うが、毎日同じことを繰り返す。
約束をしても約束を守らない。

という広汎性の子の話を見かけた。はいはい、うちの子もまったく同じ。障害特性のようですね。

借りてきた本だとか、そのあたりにある玩具だとかに、ふと目がとまると、宿題しているのを忘れる。で、忘れっぱなしで時間が過ぎて、言われてまたやりはじめても、またふと、何かに気をとられて、できなくなる。
言い訳もいろいろバリエーションふえてきたが、そもそも理由なんかないのだ。でも理由を聞かれると、いちいち律儀に、~だから、って答えなきゃいけないように思うんだよね。で、それがだいたい、人の逆鱗に触れる。嘘だから。
でも本人はなんにも悪気がない。なんで叱られるのかわかんない。
約束は、自分からしかけた約束だけが約束で、他人に強いられた約束はそもそも約束とは認識されてない。
ので、約束は守れない。
なんで叱られるのかわかんない。

こうして言葉にすると、わかりやすいなあ。

日常のなかでは、立ち止まって考えてもいられない。子どもに対しては、いいからはやく宿題すませてください、時間割して、玩具片付けて、って、追い立ててばかりなんですが、子どもがこうなのは、つまり、こういうことらしいよ、って、パパに言ったら、「それはもうまるっきり、あんたのことだ!」と言われた。
ふむ。私もパパが怒ってるとき、なんで怒ってるのか、全然わからんもん。

それで、この家、3人ともおんなじ障害特性かかえておりまして、しっちゃかめっちゃかなんですが、互いに悪気がないということだけは、かろうじてわかる。

午後、私は畑にいて、風も光もとても気持ちのいい10月の午後、
玉ねぎ植えていて、夕方、子どもを迎えに行くのを忘れた。
パパが、下校時の見回りパトロールの当番なんだが、腰を痛めていてつらいから、かわりに行ってくれと頼まれたのを、畑に行くまでは覚えていたのに、玉ねぎの苗見ている間にすーっかり忘れてしまっていた。
日頃、自分の仕事、と認識してない仕事については難しいのだ、覚えておくのが。

ふと思い出して、畑からもどったときには、子どもはすでに帰ってきていた。あーあ。

悪気はないんです。悪気は。