〇〇の話

以前は、仙崎生まれの詩人「金子みすず」にちなんで、「みすず号」と呼ばれていた。
観光列車の話だ。それが、いまはリニューアルして、新下関と東萩の間を「〇〇のはなし」号が走っている。
冬休み最初の鉄道の旅は、「〇〇のはなし」号に乗ること。息子が決めて、なぜか私もつきあうことになった。
往路の切符は売り切れだったので復路、東萩から新下関まで。
冬休み最初の土曜日、山口に帰省して、日曜日、おじいちゃんの車で東萩の駅まで。

出発時間の2時間前について、冬の風に吹きさらされても、息子はホームでビデオカメラをもって楽し気だが、私はいやだ。
駅前に大きなホテルがあるが、「2階が雑居ビル状態だ、さびれてるよ」と息子は言った。地方の町はどこもこんな感じかもな、ようやく喫茶店見つけたが、これがまた1970年代のままの感じ、ここで風よけ。
それからおじいちゃんとパパには帰ってもらって、またしばらく風吹く駅で、私たちは出発の時間を待ったのだった。
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萩と長門と下関の頭文字をとって「はなし」。車内では、日によって違う、いろいろな話を聞かせてくれるらしい(この日は往路で話は終わり)。電車のラッピングは、はまゆうの花と夏みかんの花。1両は和風、1両は洋風、西洋に憧れた日本と西洋が憧れた日本。というコンセプトらしい。

そして、胸の底まで青くなるような、美しい日本海が眼下に広がるはず、だったが。
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あいにく曇りのち雨。それでも、海が見えるのはいい。とてもいい。車窓の雨粒が横に流れる。その向こうに海。海に降る雨。次第に暮れてゆく海。さびしい無人駅のホームと冬枯れの草。
それはそれですばらしかったのだが。
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「乗客は、クリスマスイブを楽しむカップルと、クリスマスに予定がないから乗ってる人と、鉄道オタクと、温泉ツアー客」とは息子の分析だが、後ろの席に乗ったのが、中年男女6人組で、川棚温泉まで乗るらしい、これが、うるさかった。
お酒飲みながら、会話を楽しんでいらっしゃったのですけど、声、でかい。息子は、ビデオで車窓の風景を撮っていたんだけど、声が入ってしまう、とうんざりしている。
その話題がまた、そういう年頃なんでしょうけど、「わたし、おっぱいがたれさがった」とか「わたし、たれさがってない」とか、
息子、困ったふうに私を見て、「大人の酔っぱらいの話っていやだ」と言う。
たぶん、酔っぱらってなくても、大人ってこうよ。あんたたちのクラスで男子たちが「おっぱいもみたーい」と騒ぐのと変わりないから、と話す。
それでも、ちょっとうるさすぎるけど、この会話の途中で、注意するのはあんまりかなと思って、またしばらく我慢して、話題がさしさわりなくなった頃に、
すみません、ビデオに声が入るので、と声を落としてもらうお願いをした。しまった、というふうに口を押える、おっぱいがたれさがったほうのおばさん。
5分ほどは、静かだった。
それからまたにぎやかになったが、一行は、温泉の近くの駅で下車してくれたので、静かになった。

天気も悪かったし、残念だったね、と言ったら、「また今度乗ろうと思えるから、よかったよ」とあくまで前向きな? 息子だった。

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下関から在来線で山口まで戻る。夜、スーパーで買った小さいケーキを食べて、とりあえず、クリスマスイブ。