折り返し地点

長いこと、私の人生の目標は、とにかく母が死んだ年までは生きてみようということだった。そして無事、母が死んだ年を超えたので、私は一仕事終わった気分、あとは余生とのんびりしていたんだけど、ある日、息子がふいに、
「ぼくが、自分の家族をもってにぎやかに暮らしてゆくまで、ママは死んではいけないし、そのあともずっと長生きするんだよ。ママはまだ折り返し地点にも来ていないんだからね。」
と言ったので、いきなり人生が2倍に伸びた。
それはいいけど、あと半世紀、なにして生きればいいのだろうと、途方にくれてしまうような気分、それが昔、学生だった頃の、なんかもう途方にくれてばかりいた、あの頃の気分とつながっていて、いやはや何とも。

人間は大人になったらすこしは賢くなると思ってたんだけど、そうじゃないことを知るために、大人になったかもしれないなあ。
まだ折り返し地点にも来ていないんだって。どうしよう。