きのこ


 お風呂場にきのこが生えていた。こんなところに、バンソウコウを丸めたままで、と思って見たら、きのこ。いったいいつのまに。全然気づかなかった。それとも一晩で生えたんだろうか。しばらく様子を見てみよう。

 子どもの頭のなかも、小さなきのこがもやもやと育っているみたいだ。毎日なにかしら小さな驚きをくれる。
 私がブロックを組むのに難儀していたら、のぞきこんで生意気に「むりむり(無理)」と言い、教えもしないのにWindowsの画面を見て「だぶりゅー(W)」と言い、テレビ画面のテロップを、右から左へ(つまり逆方向へ)、読めない漢字やカタカナは「ぶちゅぶちゅ」でごまかしながら、「の」とか「は」とか、ひらがなをひろって読んでいく。
 天気予報のときは、読むものがいっぱいあって、忙しい。お天気マークが出ると「ゆき、ゆき、ゆき、かさ、かさ、あめ、あめ、くも、くも、くも (ときどき、くま、になる)、ぴかぴか、ぴかぴか」、降水確率や気温がでると「3、5、2、1、6……」と数字を叫んで、うるさい。

 ずいぶん、言葉を言うようになったのだ。でもそれ以上に、よく聞き取っている。2歳の子どもに、「めし、くう、うめえ」と言われて、一瞬絶句。
 私たち、言葉使いに気をつけなければ。