斃(たお)れてのち、はじまる

 

 社会学者の鶴見和子氏が7月31日に亡くなったという。享年88歳。氏の仕事は、最近の対談集しか読んでいないが、「内発的発展論」の提唱と、病にたおれて半身麻痺となってからの生き方は、とても鮮烈だった。免疫学者の多田富雄氏との往復書簡による対談(『邂逅』藤原書店)では「斃(たお)れてのち、はじまる」と語っていた。病にたおれて、半世紀ぶりに短歌があふれ出た、という話も心に残った。「地の魂(たま)を喚(よ)び起しつつ歩むなり杖音勁(つよ)く打ちひびかせて」(鶴見和子)