もくろむはただに

 なにがどうというわけでないが、なんとなく呼吸がくるしくなってきたら、空気が足りていないのだ。そういうときは、本のなかに空気を吸いにゆくほかない。数日読みちらしていたのは、西川徹郎句集と、斎藤史歌集。
 
 涙ながし空で縊死する鶯よ (西川徹郎)
              「桔梗祭」より
 さかさまに樹液流れる野に住んでもくろむはただに復讐のこと (斎藤史
              「痴春」 昭和9年作品 『魚歌』所収