帰省

 12日、帰省した。同窓会に出るための、半日だけの帰省だった。
 やさしい、なつかしい友だちに会った。ある時期を同じ町で暮らしたこと、同じ学校にいたことが、そんなにやさしい、なつかしいこととは思わなかった。
 私はクラスの人たちの名前をもう誰も思い出せなくなっていたんだけれど。
 ひどいクラスだった記憶だけある。すっかり白髪になった担任は「本当に手のかからないクラスだった」と挨拶していて、数人いたクラスメートは、笑った。
 幼稚園や小学校のころの友だちもいた。また会えるなんて思わなかった。
 ありがとう、やさしい友だち。
 
 昔、弟が16歳のころ、短い期間住み込みしていた蒲鉾屋の息子(今は店の主人)が同学年だったとはじめて知った。「ずっとうちにいて、職人になればよかったのに」と言ってくれたのは、なんだか胸が熱くなった。弟は、迷惑だけかけていなくなったのだろうに。
 
 「よし、ユニセフへの寄付はやめて、きみのとこに寄付しよう」と担任が言ってくれた。 ありがとうございます。先生。よろしくお願いします。
 
 兄と父にも数年ぶりに会った。
 子どもが軽い自閉症と診断されたこと、言ったら心配させるんじゃないかと思ったりしたんだけど、言ったら、 「なんや、おまえといっしょやないか」
 おどろいてもくれなかった。
 
 私が帰省している間、子どもはパパと、松山で坊ちゃん列車や市内電車に乗っていた。一日乗車券で、夜まで乗りまくったらしく、パパは路線図と時刻表がすっかり頭に刷り込まれていた。 子どもはなお飽きもせず、広島に戻ったら広島の電車に乗りたがった。
 いい天気だった。