少女死するまで炎天の縄跳びのみづからの圓駆け抜けられぬ 塚本邦雄
夏の電車に揺られながら、思い出していた。
少女は、やがておばさんになるんである。
むかし、母の古い友人だか、遠い親戚だか忘れたが、たまにやってくるおばさんがいて、母を相手にひとしきりしやべっていく、そのおばさんを、私はだいきらいだった。
愚痴しか言わない。際限もなく際限もなく際限もなく。
おばさんの世界観は明瞭で、私は正しく、まわりが悪い。
ガラス戸越しに聞こえてくるおばさんの声が、吐くほど気持ち悪かった。
私は正しく、まわりが悪い。
縄跳びのその世界観を一生出てゆかない。
……これはかるうく地獄だろう。
さて、世の中にはそんなおばさんが、ぞっとするほどあふれていて、それで、いやだからつきあわない、というわけにもいかなかったりするんだと、いうことが、わかるような年齢になってしまったわたしである。
かるうく地獄を生きながら、破滅することもなく、そこそこ生活はできていったりしているのは、なんていう幸運だろう。なんて無惨な幸運だろう。
いろいろ思って、ため息など出た。
少女死するまで炎天の縄跳びのみづからの圓駆け抜けられぬ
美しい一行を思い出して、耐えることにする。
夏の広島。
夾竹桃の花。
夏の電車に揺られながら、思い出していた。
少女は、やがておばさんになるんである。
むかし、母の古い友人だか、遠い親戚だか忘れたが、たまにやってくるおばさんがいて、母を相手にひとしきりしやべっていく、そのおばさんを、私はだいきらいだった。
愚痴しか言わない。際限もなく際限もなく際限もなく。
おばさんの世界観は明瞭で、私は正しく、まわりが悪い。
ガラス戸越しに聞こえてくるおばさんの声が、吐くほど気持ち悪かった。
私は正しく、まわりが悪い。
縄跳びのその世界観を一生出てゆかない。
……これはかるうく地獄だろう。
さて、世の中にはそんなおばさんが、ぞっとするほどあふれていて、それで、いやだからつきあわない、というわけにもいかなかったりするんだと、いうことが、わかるような年齢になってしまったわたしである。
かるうく地獄を生きながら、破滅することもなく、そこそこ生活はできていったりしているのは、なんていう幸運だろう。なんて無惨な幸運だろう。
いろいろ思って、ため息など出た。
少女死するまで炎天の縄跳びのみづからの圓駆け抜けられぬ
美しい一行を思い出して、耐えることにする。
夏の広島。
夾竹桃の花。